かつてのわたしは、インテリア雑誌を眺めるのが好きだった。
でも今は、素敵に飾られた部屋の写真を見ると、どうしても考えてしまう。
「もしこの家にトコジラミが入り込んだら、この雑貨達を飾っている場合ではなくなるのだろうなぁ……」
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これまでのいきさつ:
トコジラミに刺されはじめたトトリ。
駆除成功者・カズキさんから教えてもらった「待ち伏せスプレー」は購入してある。
愛犬が殺虫剤成分に触れないよう、絶対に触れない場所にだけスプレーしよう。
そう思っていたのに、カズキさんが「触れないところにかけても、問題があることを思い出した」と言い出した。
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「問題って、なんですか?」
「ニオイだよ。そのスプレー、ニオイがきついんだ」
「あー……」
「もちろん時間が経てばニオイは薄くなるけどさ。人間が気にならないくらいには薄くなっても、犬にとってはどうだろう」
犬の嗅覚は、人間の数千~1億倍とも言われる。
ちょっとやそっと薄くなったところで……
「とりあえず、一度寝室以外にスプレーしてみます」
……そうは言ったものの、しばらく撒くのは躊躇していた。
でも、やはりもう、仕方がない。
ためしに、愛犬・ルディがあまり行かない部屋にスプレーしてみよう。
和室がいいだろう。
待ち伏せスプレーは、立体的に撒くのが良いとされている。
壁と床の境目に、グルリと部屋一周。
壁と壁が接する角の部分を縦に。
壁と天井の境目に、またグルリと。
しばらく和室にはルディを絶対入れないことに決めて、その教えどおりに撒いてみることにした。
しかし……
スプレーしはじめた時から気づいてはいたけれど、確かにこれは、けっこうニオイが強い。
吸い込んだら体に悪そうだなと感じるニオイだ。
もちろんそれでも、それでトコジラミが駆除できるのなら余裕で我慢できるニオイではある。
しかし、犬にとっては……
「なにしてるの?」
コーヒーを淹れに一階に降りてきた夫が、和室のドアを開けて入って来た。
次の瞬間、夫は顔をしかめた。
「うわーっ。なんだ、この化学的なニオイは!」
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