「青いカフタンの仕立て屋」とタジン料理 | ボクらの映画めし

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映画に出てきたごはんを作ってみた。なるべくヴィーガン

モロッコの伝統衣装カフタン。
結婚式など特別な時に着るドレスで、母から娘に大切に伝えられる。アップで映される、職人の手元の針さばきが美しい。

 



ただ、お客さんとの会話に垣間見えるのは、ミシンで作る職人が増え、技術の伝承が危機にあるこということ。

 



ハリムは父から受け継いだ仕立て屋を営む職人で、妻のミナは接客や仕入れを担当する。
彼女は重い病にかかっており、助手として、若い職人ユーセフを雇う。ユーセフ役の若い俳優の目がとても魅力的。

ミナ役のルブナ・アザバルは「灼熱の魂」でも、意志の強い感じの女性を演じていた。ストーリーが複雑ですでに何一つ説明できないが💦

 


さて、ハリムとミナは、長年二人だけで店を営なんできた(たぶん)。そこに突然新たな人間が入り込み、複雑な関係が生まれる。

しかも、ミナはもう出勤できるような病状ではない。

一度は壊れた三人の関係が、それぞれに悩みながら互いを思いやりながら修復されていく姿に、中東の音楽やダンス、料理などが絡められる。

 



ユーセフがミナのために作ったタジン料理を、土鍋で真似てみた。私なりのレシピは最下部に記載します。


わたし、卵アレルギーなのよ、知らなかった?
というセリフがすてき。

 



モロッコのカフェは男ばかり。おそらく、日本に暮らす私たちの想像を超えて、男尊女卑、恋愛やファッションの制約、イスラムの教えなど、個人の行動への圧力が大きいのだと思う。

 



街には時間になると、コーランが流れ、祈りの時間が持たれる。
一貫してこの映画では、街の音がいつも流れていて、家の中と外の境目を感じさせない。

カフェや公衆浴場などの音や光景も、興味深いし、生活スタイルが垣間見える。

ミナは毎日、街に流れるコーランの調べに耳を傾け、ベッドの横に座って、指を小さく回しながら、祈りをささげる。

彼女の行動や考えは、この地域の人たちの常識を外れていて、とてもかっこよくてやさしいけれど、祈りをささげる姿は伝統的。

 

おそらく、宗教の本質は人の心を救う純粋なものだけれど、権力やお金が絡み、暮らしや生き方への縛りを持ったとき、人々を苦しませることになるのではないか。

ミナは、自分は自分らしく、祈りのエッセンスだけを取り込んで、人生の終末に向かう自分の栄養にしているのだと思う。
ミナ役の女優ルブナ・アザバルの身体は終盤に向けてどんどんやせ細っていく。撮影中、断食して、役に入り込んだのだろう。

 



この映画は、3人の関係性の機微がよく描かれ、そこが見どころであるが、一方で、

人生の終わりをどのように過ごし、終うのか、周りの人間がどうかかわり、彼女の気持ちをどう受け取ったのか、ということも、この映画の大きなテーマだと思う。

 



 

最後の最後まで見ごたえがあった。
機会があれば、もう一度観て味わって、自分の身体に刻んでおきたいなと感じる映画です。

【料理記録】冷蔵庫にある野菜で作りました

(1)鍋に、ニンニクとオリーブオイル、玉ねぎ、ニンジン、ピーマンを順に投入して炒める。ジャガイモも入れたかったが時短で入れず。

(2)息子が作り置きしていたトマトソース。作り方を聞いたところ↓
1.玉ねぎのみじん切りをオリーブオイルで炒めて飴色にする。
2.ざっくり切ったトマトを入れて強火で炒める。
3.つぶして、塩、ローリエを入れて、弱火で15分煮る。
大変なら市販のトマトソースで!

(3)(1)を土鍋に入れ、その上に(2)のトマトソース、ざく切りのトマトとゆでたチンゲン菜を載せる。

(4)土鍋で弱火で煮て、とき卵2個を流しいれ、好みの固さまで蒸し煮する。

 



【おまけ】

つい先日、娘の結婚式で、母から譲り受けた日本の伝統衣装「黒留め袖」を着ました。
ファストファッションと対峙する、世代を超えて長く着る、芸術性や技を継承し、伝統に価値を置く衣料。大切にしたいと感じました。