トレーナーやコーチとして選手のパフォーマンスを向上させていく上で、見落としてはならないポイントがあります。
それは、パフォーマンスの構造です。
パフォーマンスをアップさせるには、その構造を熟知していなければなりません。
僕はその構造に目を向けていることがパフォーマンスアップを考える上での最低ラインだと考えています。
(もちろん熟知していることが理想)
構造を知らないままパフォーマンスをいじるほどリスキーなことはありません。
命に関わらないから問題にならないだけで、本来は、医師が人体の構造を十分に知らないままオペに臨むようなレベルです。
パフォーマンスは大きく分けて、フィジカル・スキル・認識力(内的認識力・外的認識力)の3つの構成要素から成ります。
内的認識力とは、自分の状態がどうなっているかということを認識する能力のことです。
例えば今どこに重心位置があるのか、どこに力が入っているのかということが認識できる能力のことです。
内的認識力が低い状態だと、「思い通りに身体を操る」というパフォーマンスの土台部分がぶれることになります。
*もちろん重力という外力が関わっている以上、外的な認識能力とも無関係ではありません。
これは非常に重要なことなのですが、内的認識力が低いと「なぜうまくいったのか」「なぜうまくいかなかったのか」というフィードバック・フィードフォワードが不十分になり、再現能力や修正能力が低い状態となってしまいます。
イチローさんや武井壮さんも同様のことをおっしゃっており、彼らがいかにこの内的認識力という能力を重視していたのかを伺い知ることができます。
外的認識力とは、相手と自分の位置関係や、ゴールまでの距離・方向、ボールの重さや道具の重心位置を認識する能力のことです。
サッカーやバスケのように瞬時にスペースを見つけて走ったり、ボールを保持しつつも相手を振り切ってフリーになった味方選手にパスを出したりするには非常に重要な能力です。
また、多くのスポーツで道具を使用しますが、道具の重心位置や形状・硬さなどを感知し、その道具の能力を最大化できるように身体操作を行う能力も、この外的認識力が強く関与します。
一例を挙げると、ゴルフのクラブはシャフト部分がしなるようになっていますが、一流選手は必ずこのしなりを最大限活かすようにスイングします。
シャフトのしなりを感じながら、しなりの反動が最大化するタイミングでインパクトを迎えられるように振ります。
これができれば、「軽く振っているのにめっちゃ飛びますやん!」につながります。
近年シャフトは大きくはしならない方向性にありますが、小さいしなりであればあるほどこの認知による差は大きくなります。
近代スポーツでは道具の機能がどんどん高くなってきており、その機能をフル活用できるか否かが勝負に大きな影響を与えるようになっています。
外的認識力は、そういう意味でも重要性が高まっています。
*JARTAではエクスコーディネーションというトレーニング体系によって集中的に外的認識力をトレーニングすることができます。
スポーツ科学の発展によりこれらの要素の細分化については非常に進んできています。
現状のトレーニングの傾向として、細分化したものを個別に強化し、それぞれの向上が全体の向上につながるという考え方になっています。
しかし、ここで気をつけたいのが、それぞれの関係性です。
この三つの構成要素は、決して別個に独立して成立するものでなく、お互いに強く影響し合います。
例えば、ストレングスを目的として重いバーベルを何回も挙げられるように全力でバーベルを持ち上げている時、内外の認識力はどうなっているでしょうか?
多くの場合、全力でバーベルを持ち上げることに集中がいくことで内外の認識力は発揮されていない傾向が強くなります。
このとき問題になるのが人間の「学習能力」です。
人間はすべての運動と、その運動の「状態・様式」を学習します。
例えば日常生活の動作も競技のパフォーマンスに反映されるのです。
バーベルを持ち上げるために全力で筋力を発揮することと、内外の認識力を発揮することは一見「別個」のように思われがちですが、そうではありません。
これらは密接に関係しあいながら身体は変化していくのです。
この作用が、「身体は大きくなった、筋力も上がった、でも肝心の競技でパフォーマンスが低下した」という現象の理由です。(マイナスの学習といいます)
人間は良くも悪くも、すべての運動を学習してしまいます。
無意識に左足に乗って立つとか、無意識に腕組みするなどのクセだって、覚えようとしてやったわけじゃないでしょう。
学習能力を利用して全ての日常生活を鍛錬に活かそうという考えを言葉にしたのが「行住座臥」という古来より武道で用いられる概念です。
休んでいる時も寝転んでいる時も全てトレーニングですよ、全て自分のパフォーマンスに影響与えまっせ、という意味です。
パフォーマンスアップを考える上では、実施するトレーニングがフィジカル・スキル・認識力がどのように関係し合うのかを念頭に置く必要があるのです。
JARTAではこの考え方を統合化トレーニングとし、トレーニング指導においては、強化する一つの要素がどのように他の要素に影響を与えるのかを分析しながらトレーニング方法を考案し、マイナスの学習を排除しながらパフォーマンスアップを図っています。
我々は他者に努力させる側だから。
全てはパフォーマンスアップのために。
中野 崇
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