多くの競技で問題になってきたオーバーワーク、オーバーユース。

練習やりすぎ、使いすぎ。

それによって起こる身体的・精神的な問題のことです。

 

 

 

プロや代表レベルだとコンディション管理がかなり浸透し、以前ほど大きな問題にはならなくなりました。*減っただけで確実にあります。

 

 

 

 

しかしそれ以下のカテゴリーではまだまだこの問題は多い。

多いし、指導側がこの点に対して無頓着なケースにも多々出会います。

今年のGW10連休、すべて練習や試合があったというケースだって多かった。

だいぶ減ってきたという意見もいただきましたが。。

 

 

 

 

 

 

オーバーワークの問題が言われ出してかなりの年月が経っています。

様々な科学的データでも検証され、スポーツ科学分野ではもはや常識です。

 

 

 

しかし残念ながら裾野で当たり前になるという”常識の変化”というところまではまだかなり遠いように感じます。

 

 

 

なぜなのかを改めて分析してみます。

 

 

 

この問題を俯瞰して考えると、そこには技術的な面と感情的な面が、論理性を超えて絡み合っていると思います。

 

 

 

感情的な面の代表格は、「勝たせたい」「勝ちたい」。

そしてそのためにチームを、自分を「追い込みたい」があります。

追い込んだ先に、限界を超えた先に成長がある、という考え方。

 

 

 

もう一つは技術面。競技によっては戦術面も。

上記のような感情から引き起こされるものだと思いますが、試合までにできだけたくさん技術・戦術練習をしておきたい、それが試合で活きる、という考え方です。

特に試合直前にその傾向が強まります。

 

 

 

もちろん他にもたくさんあると思いますが、傾向としてはこれらに集約されていくと思います。

こういう感情・考え方を背景にした「長い練習・厳しい練習」によって「追い込む」ことを良しとする価値観があります。

 

 

 

指導側だけでなく、選手自身にもです。

 

 

 

これらを否定するのは簡単かもしれませんが、僕も現場の人間なので心情的にはわかります。

しかし僕は同時に理学療法士という国家資格を保持した身体の専門家でもあります。

 

 

 

だからこそ、こういう考え方から実行されてきた方法によって何が起こるのか、どんなリスクがあるのかを考察する立場にあるとも思います。

考察するだけではなく、これらの感情を満たしつつ、「本来の目的」を達成するための方法を構築する立場にあります。

 

 

 

まず、オーバーワークの根底にあるのは「やればやるほどレベルがあがる」という認識。

そして先述した、追い込んだ先に、限界を超えた先に成長がある、という考え方。

同時に、休むと退化する的な発想。

 

 

 

ただ忘れてはいけないのは、これらはすべて「選手たちに心身ともに成長してもらいたい」という思いがあるということです。

ここが抜けた議論は、議論とは似て非なるもの。

(もしかしたら変わらないのはここが一番の理由なのかも。。)

 

 

 

それを前提として話を進めます。

 

 

 

まず練習の目的を再確認します。

なぜ練習をするのかって、「練習で培ったものを試合で再現するため」です。

 

 

 

だから、再現性能力を高めるのが練習の重要な目的の一つ。

再現性能力は、当然のこととして集中力が低下した状態で惰性でやっても身につきません。

 

 

 

「一夜漬け」という言葉があるように、テストの前日に徹夜でヘロヘロになりながらやった勉強は、しばらく経ってから急に行われる実力テストでは大半は再現できない、という経験がある人も多いかもしれません。

テストで点は取れるかもしれませんが、「実力」は身についていない、という現象です。

 

 

 

オーバーワークを引き起こすときに欠如しやすいのが、集中力と学習効率の観点です。

 

 

 

時間と集中力。

朝から晩までという長時間の練習では、集中力をずっと高いレベルに維持するのが困難なことは容易に推察できます。

集中力が低下した状態での練習から得るものは非常に少ないことも同様です。

 

 

 

体力と集中力。

また、体力的に追い込まれると、集中力は落ちます。

学習効率も、それに伴って低下します。

 

 

 

こういう視点が浸透してきたプロ野球やプロサッカーなどでは、余程の理由がない限り2部練は稀です。

海外ではジュニアカテゴリーでもすでに常識中の常識。

 

 

 

もう一つは身体の観点で。

「損傷の蓄積」です。

 

 

 

以前の記事でも書きましたが、高いパフォーマンスを発揮するためには回復力という観点が不可欠です。

どんなに良い身体操作ができている選手でも、使った部位は疲労します。専門的には筋の微細損傷、と表現することもあります。

特に同じ動きを繰り返す競技ではその傾向は強まります。

例えばピッチングなどです。

 

 

 

 

怪我が起こるケースでは、この微細損傷が回復する時間的な余裕が不足して、微細損傷が回復しないまま蓄積することが背景にあります。

突発的な怪我、と考えられることが多い靭帯損傷などでも、実は同じ構図だったりします。

 

 

 

長時間の練習では、必然的にこの構図に近づいていきます。

 

 

 

アイシングやってるから十分でしょ、と思われる方もいるかもしれませんが、アイシングは「回復モード」を作る一助になっているだけで(しかも効果には諸説あり)、回復にはやはり時間が必要です。

*もちろん練習で酷使される「脳」も同様です。

 

 

 

脳と身体が回復する時間もハイパフォーマンスを発揮するための要素だと考えると、決して「練習しない時間」は”退化”ではないはずです。

 

 

 

そういう観点から「リカバリー能力」を高めるための動画プログラムを準備しています。

すでに多くのチーム・プロ選手で導入されて実績のあるものですので、回復力という課題をクリアしていくために有効だと思います。

https://ameblo.jp/bodysync/entry-12464992152.html

 

 

 

***

 

 

 

もちろん、身体が疲労しきった状態で何ができるか、という課題も競技によっては重要な意味を持ちます。

試合や大会などそういう状況で力を発揮することが要求されるケースも確実にあります。

だから「計画的に追い込む」という日も必要です。

 

 

 

問題は無計画に、慢性的に追い込むことが常態化すること。

回復が追いつかず、オーバーワークで心身の問題を起こすのは後者です。

 

 

 

練習時間の設定指標としては、「もっと練習したい」「早く明日も練習したい」という状態で終えられること。

身体的にも精神的にもです。

*計画的に追い込む日、は別です。

 

 

 

 

ちなみに、”自分を追い込む”選手の特徴として、「身体をぶっ壊すほど練習をしてないと不安」という感情を持っている選手はけっこう多いです。

 

これもやはり感情なので、否定しても何も変わりません。

不安という論理性を超えた側面が影響していることを忘れてはいけません。

だから時間をかけて「どういう状態がハイパフォーマンスを発揮できる状態なのか」をまず理性として理解することからスタートします。

そこから小さな成功体験を重ねつつ、そういえば長いこと怪我をしなくなったな、という長期的な成功体験を得てもらうことが重要です。

 

 

 

 

 

 

 

全てはパフォーマンスアップのために。

 

 

 

 

 

中野 崇

 

 

 

 

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