ピッチャーが筋トレすべきかどうか。
パフォーマンスアップに筋力の重視が必要か否か。
よくあるこの問いには絶対的な答えはありません。
なぜなら、その選手にとって必要なものは、常に「どこに向かうのか」、「何を持っているか」次第だからです。
遠足に行くのに、弁当と水筒と敷物が必要だったとして、弁当と水筒をすでに持っていたら、必要なのは敷物です。
弁当を持っているんだったら、水筒と敷物が「必要なもの」になります。
その遠足が、もし寒い場所だったら、防寒着や手袋も必要物に入ってくるかもしれません。
もちろん、「遠足に行くためにはそもそも何が必要か」を知っていることは大前提です。
遠足に行くためにそもそも必要なもの、遠足に行く人がすでに何を持っているのか、この二つを知らずして、”最新の弁当箱”をひたすら勧めるのは、もちろんロクな結果を生みません。
ピッチングの話に戻ります。
遠足に行く時そもそも必要な持ち物=ピッチングの運動構造です。
ピッチングパフォーマンス向上のためのトレーニングを指導するのであれば、まずはここ。
そして遠足に行く人がすでに持っているもの=ピッチングの構成要素で欠けている、不足しているもの。
これは専門的には「評価」と呼ばれています。
もちろんこれらは何もピッチングに限ったことではなく、スポーツにもリハビリにも全てに当てはまることです。
ピッチングの運動構造の中で、もちろん筋力は入ってきますし、「持っているもの」の中で筋力が不足しているケースも多いです。
*当たり前ですが、「どこの」筋力かは非常に重要です。
しかし同時に、筋力は疲労や加齢で衰えやすいものの代表格でもあります。
そして体格に恵まれない投手からすれば、常に不足しているものの代表格でもあります。
今、筋力がバッチリある選手でも、加齢によって衰えてしまえば、もう取り返しがつかないものにもなり得ます。
つまり、筋力は常にその低下をカバーできる準備を備えておく必要があると言えます。
それを物理学的に表現すると、「力積」であり、「力」。
例えば力だと、F=maという有名すぎる方程式で表現されます。
F=maとは、力=質量×加速度という意味。
もっというと、質量は加速運動に参加する部位の質量。
この方程式に筋力という具体的なファクターは存在しません。
「力」の大きさを表すのに、筋力というファクターが記載されていないのです。
このことから言えることは、運動に参加する部位の質量を高める・かつ加速度さえ高められれば、極論を言うと「筋力は少なくても大きな力を出せる」、ということ。
そういう意味で、ジャイアンツの上原浩治投手のピッチングモーションは非常に多くのことを示唆します。
今はちょっと調子を落としていますが、専門的な視点から考えて筋力や体格に頼らない非常に有効な身体操作です。
上原選手のフォームについて、そんな話を書きました。
https://bbcrix.com/articles/70911/original
筋力に頼らない「力の発揮方法」のための身体操作を習得しておくことは、メリットしかありません。
お読みいただき、ありがとうございました。
全てはパフォーマンスアップのために。
中野 崇
追伸
こういう風に考えると、筋トレが必要か不要かという二次元論的な議論はあまり意味がないことがわかると思います。
「力」を増やしたいなら、F=maを高めればいいし、あとは「選手が持っているもの」次第です。
JARTAのトレーニングは全てこういった視点でデザインされています。
トレーニング指導をご希望の方は下記から(初回半額です)。
JARTAのオフィシャルLINE@