前回記事で、サッカーやフットサルは欧米(南米)発祥の競技だから、高重心系スポーツだと書きましたが、よくわからないとの声があったのでもう少し詳しく。
まず、大前提を二つ。
【前提その1】
欧米人は心身ともに高重心。
日本人は心身ともに低重心。
心身ともに高重心というのはどういうことか、どうやって見分けるのか。
それは、「いつでも素早く動ける状態」を保っているかどうかです。
例えばわかりやすいのは椅子生活であること。
地べたに座っている状態と比較すると、どちらが素早く動けるかは明確です。
重心が低い位置にあるのと高い位置にあるのとでは、物理学的に後者の方が移動には有利です。
*欧米人ももちろん地べたに座ることもありますが、基本的には地べたに腰を下ろすことは日常的ではありません。
動きについては、膝よりもまず股関節を優先的に動かします。
低重心系身体操作では膝を曲げる動きの優先度がそれに比べて高まります。
*もちろん、これらは高重心と低重心を比較した場合の傾向であり、股関節を使えている選手であれば股関節が優先的に曲がりますし、欧米でも股関節がうまく使えない選手はいます。
こちらも当然、股関節が優先的に使えている方が移動、特に高速移動には断然有利に働きます。
そして腕も非常によく動きます。
日本人が腕を使う場合、まず下半身をどっしり安定させてから使おうとすること多し。
ちなみに精神面の高重心を象徴することとしては、例えば転職に対する評価。
欧米文化では、転職はとてもポジティブに捉えられます。
日本だと同じ会社、同じチームを貫くことが美徳という扱いを受けることが多い。
【前提その2】
スポーツは元々は遊び。
(儀式から発展した競技もありますが)
元々は遊びということは、「楽に、楽しく、うまくできる」、という条件が満たされなければなかなか浸透しません。
つまり高重心系の人々が作った遊び=スポーツは、必ず高重心系スポーツになります。
高重心系の人々では、決して相撲や柔道という”遊び”は生み出しません。
彼らにとっては相撲は「とても難しい競技」だから。
【相撲は低重心を要求される】
こういう長ったらしい2つの前提を踏まえて、要するに低重心系が高重心系スポーツをやるというのはどういうことなのか。
これは逆に考えてみるとわかるかもしれません。
高重心系である欧米の人が、日本の相撲部屋に入門して力士になる場合。
まず、重心を低くできることが強く要求されます。
四股踏みやテッポウという稽古を使って、ひたすら「低重心系の動き」を鍛錬します。
出典:https://www.nikkei.com/article/DGXZZO65339720V10C14A1000000/
とにかく腰を低く低くと指導され続けます。
これが高重心系の人々が、低重心系スポーツをやるという状況です。
体重が重ければ勝てるわけではない、というのが重心の高さの問題を顕著に表します。
バイオメカニクス的な重心位置と意識を含んだ身体操作的な重心位置は少し異なります。
この辺りはややこしいので、ここでは省略。
というわけで、重心システム(高重心系、低重心系)が異なる競技をやる場合は、まずなるべく早急にその競技に適合した重心システムを獲得するのがパフォーマンスアップへの近道です。
いや、近道というより、本来は必須。
外国人力士が相撲をやるときに、「まず重心を低くせよ」と習うのに対して、
サッカーをやる日本人選手に「まず重心を高くせよ」と指導しないのはなぜ?
もちろんこれらのことはいちいちデータを取って検証した話ではありません。
ここでいうような重心システムについては最新の測定器でも測定できないことがわかっています。
しかし、学校の数学で習った証明問題のように、A=Cを直接的に証明する材料がなくとも、
A=B
B=C
が証明できれば
A=Cは成り立ちます。
文化的背景をも踏まえた重心システムを、いくつもの要因から複合的、階層的に捉えたら、これは明確に言える。
今はまだ、「それを説明できる言葉を持ち合わせていない」だけ。
お読みいただき、ありがとうございました。
全てはパフォーマンスアップのために。
中野 崇
追伸1
もちろん、高重心競技だから低重心は不要というわけではありません。
局面に応じて、使い分ける必要があるということです。
ずっと低重心だとかなりまずい。と言いたいのです。
追伸2
本来は、高重心系身体操作を獲得するトレーニングを行うプロセスで感覚的に意味はわかってくると思います。
高低の重心システムを扱うには、本来は身体が柔軟であり前後左右の重心位置を明確に捉えられるようになってから。
JARTAでも一部のトレーナーは扱えますので、ご希望があればその旨記載してご依頼ください。
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