Ballet「ラ・バヤデール」2024年4月27日 新国立劇場バレエ団 | パレ・ガルニエの怪爺のブログ

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2024年4月27日(土)14:00 

新国立劇場オペラパレス(初台)

「ラ・バヤデール」

音楽 レオン・ミンクス

原振付 マリウス・プティパ

改訂振付 牧 阿佐美

 

指揮 アレクセイ・バクラン

演奏 東京フィルハーモニー交響楽団

 

ゲストコーチ フリオ・ボッカ

 

ニキヤ:小野絢子

ソロル:福岡雄大

ガムザッティ:直塚美穂(初役)

ゴールデン・アイドル:奥村康佑(パンフレットでは、「黄金の神像Bronze Idol」と表記 金ぴかの身体で、Bronzeではないです。)

壺の踊り:渡辺与布(初役)

影の王国

第1ヴァリエーション:五月女 遥

第2ヴァリエーション:池田理沙子

第3ヴァリエーション:飯野萌子(初役)

 

以前拝見したときより、小野絢子さんのニキヤ像が整理され、ソロルへの恋心一筋の乙女に徹した表現となったような気がしました。

巫女の場面でも、バレエ・ブランの場面でも、BRAVAというほかない踊りで、小野絢子さんのニキヤは、見ないと損をすると思います(他のダンサーのニキヤは見ていないので、個人の無責任な感想です)。

このようなニキヤの表現のステップアップの立役者は、吉田都芸術監督なのでしょうか、それとも、今回、ゲスト・コーチに招かれたフリオ・ボッカさんなのでしょうか?

小野絢子さんの表現を支えているのが、巫女の際のブラで胸を覆うだけの上半身という衣装で露わになっている、踊りの間、始終、draw inして強くお腹を引っ込め、肋骨と肋骨の下縁部をくっきりと浮き出させている身体の姿勢の保ち方だと思います。

他の巫女の衣装のダンサーのお腹も当然、見えるわけですが、そこまでのdraw inを続けているダンサーは、見当たりません。

ニキヤの死の直前のソロのヴァリエーションのときも、こうした身体の使い方によって、極限まで、よく伸びた腕や反った背中が見せられることから、ニキヤの強い悲しみなどの感情がより分かりやすく、観客に届けられるのだと思います。

花籠を渡されてからの音楽は、以前は、やや軽薄なドタバタ調のような印象を禁じ得ないものだったのですが、今回、変更が加えられていました。

ちなみに、花籠の中に潜んでいる小道具の蛇は、明るい緑色のような短めのチューブ状のものに見え、蛇らしく見えませんでした。

また、演出上も、第1幕で、ガムザッティが、ニキヤに対して、ソロルを諦めさせようとして宝飾品を与えて買収しようとするところが消されるなど、整理がなされています。

この場面で、ニキヤがナイフを手に取って、ガムザッティを刺そうとするところは、以前のシーズンの舞台では、そういう感情的で暴発もするニキヤ像と小野絢子さんの持ち味が合わず、ストーリー展開上、違和感が残ったのですが、今シーズンは、このとき、ニキヤは、ガムザッティに追い詰められて、思わず、似合わない行動に出てしまったということにしたように受け取れました。それなら、以前のような違和感は残りません。もっとも、ニキヤではなく、すっかりアヤコになってしまって、舞台からニキヤがいなくなってしまうおそれはあります。

 

ガムザッティの直塚美穂さん、プリンシパルの小野絢子さんに対抗して頑張っていたと思いますが、イタリアン・フェッテを繰り返すなどの派手な見せ場のヴァリエーションの最後で、音楽が余ってしまったように見えました。何か振付のターンか何かが飛んでしまったのでしょうか。

 

バレエ・ファンとしては、コンクールなどでもおなじみの「ラ・バヤデール」の影の王国での3人のソロのヴァリエーションは、見せてくれないと治まらないという気がしますが、ストーリー展開の上では、無駄という気がしました。

バレエには、ストーリー展開に関係がない、又は余り関係のないヴァリエーションが付き物で、いつもは余り疑問を持ったりせず、いろいろな踊りを見せて貰ってお得だという感覚なのですが、ストーリー展開の上での緊張感を失わせるおそれがあるのではないかと思いました。

口直しのソルベみたいなものだと思いますが、メイン・ディッシュが十分においしい場合、口直しは不要ということもあると思います。

なお、この日の3人のダンサーのヴァリエーションは、それぞれ美事なものだったと思います。そういう美事な踊りがストーリー展開と結びつけられていると、もっと作品としての完成度は高くなるのでは、という気がします。

(24人のダンサーが延々とアラベスク・パンシェを繰り返す陰の王国の導入部の踊りは、ストーリー展開と密接に結び付いていると思いますが、第1~3のヴァリエーションは、どう結び付くのか、私には、よく分かりません。)

 

影の王国でのニキヤとソロルの長い布を使ったパ・ド・ドゥの布は、神殿の崩壊の後、天国に上ってゆくニキヤの後を追おうとするソロルに差し伸べられる命綱のようにニキヤがその布を後に引きずってゆくという形で、再登場するのですが、ソロルは、それをつかみ続けられず、手放して、坂道の途中で息絶えてしまいます。

まあ、二股男なので、適切な報いだと思います。

ただ、ニキヤを毒蛇で殺したラジャとガムザッティは、神殿崩壊のとき、右往左往して、舞台袖に消えてしまい、少なくとも下敷きになるというところまでは描かれていないので、助かったという解釈余地も残ります。

ラジャが侍女に指図して、毒蛇の入った花籠を用意させたという演出なので、そこは、神殿崩壊で下敷きに…ということを演出上、明白にしておいた方がよいような気がします。

 

私は10歳を先頭に孫のいる年齢なので、今回の舞台で、壺の踊りに出てくる2人のお子様がかわいらしくて、仕方ありませんでした。しかも、お二人とも、年少ながら自分の個性をきちんと表現しているように見えました。もっとも、ご家族の方は、ステップを間違えたりしないかと心配で、落ち着いて、かわいいなどと思って見ているわけにはゆかないのでしょうね。