2023年6月9日(金)午後2時~
新国立劇場(初台)オペラパレス
バレエ「白鳥の湖」
振付:マリウス・プティパ、レフ・イワーノフの原振付に基づくピーター・ライト改訂版
演出:ピーター・ライト、ガリーナ・サムソワ
舞踊指導補助:佐久間奈緒
美術・衣装:フィリップ・プロウズ
照明:ピーター・タイガン
指揮:ポール・マーフィー
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
- オデット/オディール:吉田朱里
- ジークフリード王子:渡邊峻郁
- 王妃:楠元郁子
- ロットバルト男爵:小柴富久修
- ベンノ:中島瑞生
- クルティザンヌ(パ・
ド・カトル:ベンノと王子を加えてのパ・ド・カトル):廣川みくり、広瀬碧 - 花嫁候補/ハンガリー王女:中島春菜
- 花嫁候補/ポーランド王女:池田理沙子
- 花嫁候補/イタリア王女:五月女遥
吉田朱里さんの王子と出会ったオデットの感情の変化の表現(恐れ、驚き、好奇心、好意など)は、表現を遠慮している感じで、ちょっと物足りない印象でした。ダンサーが湖畔の出会いをどう表現するか、楽しみにしている観客は多いと思いますので、吉田朱里さんにしかできない表現をぶつけるつもりで舞台に立って欲しいと思います。
物語のエンディングとしては、悲劇的エンディングで、人間に戻れないことを知ったオデットが湖に身を投げ、王子もロットバルトを倒した後、オデットの後を追って身を投げ、二人は天国で結ばれるということが示されます。
(ここは、オデットは人間の女性ではなく白鳥の姿なのでしょうかね。そうすると、王子が、湖に身を投げた白鳥の後を追って、湖に身を投げるという情景は、私には、ちょっと抵抗があります。このバレエは、白鳥とか人間とかをあまり突き詰めずに見た方がよさそう。)
瀕死のロットバルトを白鳥たちが追い詰めるところがいいなと思いました。コール・ド・バレエが一糸乱れずに白い塊となって舞台袖にロットバルトを圧迫してゆくところがなかなかの迫力です。
第1幕のパ・ド・カトルの第2ヴァリエーションを踊った女性ダンサー、多分、広瀬碧さんだと思うのですが、手先から足先まで、常に全身がコントロールされた、雑な動作が全くない、端正な踊りで(←素人でヴォキャビュラリーが不足しており、うまく表現できないのですが、一生懸命褒めています。)、いいなと思いました。
(ただ、グランジュテのときは、意識的に安全運転しているような印象を受けました。足首や膝など、どこかに故障があるのに、無理をして舞台に出ている・・・ということでないといいのですが。)
王子を見るときのクルティザンヌらしい目つきなど、演技もなかなかのもの。今回のクルティザンヌ役の印象の延長線で、広瀬碧さんが「ラ・バヤデール」のニキヤを踊るのを観てみたいという気がします。
演技面では、花嫁候補の各国応援団や花嫁候補自身が踊り終わった後、観客席に向かってレヴェランスをするだけで、女王に敬意を表す演技が省かれているところが気になりました。お約束として、皆わかっていることなので、なくてもいいのでしょうが、そういう風に省略しだすと何も残らなくなってしまうかも。
バレエの物語展開としては、踊り終えた後、舞台上の女王に対してレヴェランスを行い、バレエの舞台展開を離れて、客席に対してレヴェランスをするというのが常道だと思います。
また、振付、衣装の問題としては、各国の花嫁候補の応援団がキャラクテール・ダンスを踊り、その後、花嫁候補がソロで踊るという場面で、各国花嫁候補応援団の民俗衣装と花嫁候補の衣装に繋がりがなく、花嫁候補3人が基本的に共通の古代インド風(?)衣裳を与えられ、また、花嫁候補のソロの振付も各国応援団のキャラクテール・ダンスと繋がりが(ほとんど)ないことは、気になりました。
応援団と花嫁候補は、衣装でも振付でも、もっと繋がりを持たせた方がよいのでは。
ちなみに、スパニッシュの4人は、オディールの応援団という位置づけですが、オディールの振付には、特にスパニッシュの風合いはないものの、オディールの踊りは盛りだくさんで大変なので、まあ、それは、いらないかなと思います。
今日は、第4幕で、オデットの転倒がありましたが、すぐに立ち上がって、うまく踊りを続けていました。
吉田朱里さんは、きっとオデットになりきっていたので、観客席から見えた後ろ姿の映像としては、王子に裏切られた悲しみや動揺からオデットが舞台に倒れ伏すという演出のようにも見えました。ただ、オデット役本人か、コール・ド・バレエのどちらかが「あっ」というような声を上げたのが聞こえましたし、舞台に倒れ伏すという演出なら、倒れ伏す場所が舞台の端過ぎて不自然でした。
座ったコール・ド・バレエの間をすり抜けるところでしたので、コール・ド・バレエの誰かの脚につまずいたのかも(バレエ漫画ですと、主人公の敵役の手下がわざと邪魔をしたという場面ですね。)。
また、演奏では、ホルンが許容範囲というのは難しい変な音を出したことがありました。
本番に向けて完成度を高めるための舞台稽古ですので、今回の反省点をきちんと本番に生かしてもらいたいと思います。
なお、小野絢子さま同好会(自称)としては、小野絢子さまの本番の舞台を観た上で、付け加えるべき点があれば、付け加えたいと思います。