☆☆☆S Ballet「白鳥の湖」2023年6月11日(ソワレ)新国立劇場バレエ団 | パレ・ガルニエの怪爺のブログ

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2023年6月11日(日)午後6時30分~

バレエ「白鳥の湖」

新国立劇場オペラパレス(初台)

 

オデット/オディール:小野絢子

ジークフリート王子:奥村康祐

ベンノ(王子の友人):木下嘉人

クルティザンヌ:奥田花純、池田紗弥

4羽の白鳥:池田理沙子、五月女遥、廣川みくり、池田沙弥

2羽の白鳥:金城帆香、山本涼杏(パ・ド・トロワ、またはパ・ド・カトルにした方が見慣れていてよいと、私は思いました。)

花嫁候補・ハンガリー王女:廣川みくり

同上・ポーランド王女:直塚美穂

同上・イタリア王女:赤井綾乃

 

小野絢子さんのオデットを見ながら考えたのですが、オデットの姿については、(演出によって変わり得るものだと思いますが、)今回は、第2幕で登場してアティテュードまでは白鳥、それからそこで人間に変わり、第3幕の王宮の舞踏会の窓の外に映るところは白鳥(白鳥でないと警備が厳重な王宮に簡単に出入りできないはず。窓の外で悲痛に羽ばたく振付も、白鳥が前提?)、第4幕は、王子に裏切られて、もう永遠に人間の姿には戻れないということで白鳥という解釈をしました。ただ、第4幕で、王子は、白鳥の姿のオデットに、美しい人間の王女の姿を重ね合わせて見て、後悔の念を深めているのではないでしょうか。

もっとも、①第2幕の湖畔の出会いのときのオデットの振付には右腕を白鳥の首のように上げた白鳥の姿を前提とするようなものが混じっていること、②第2幕で王子の同行者がコール・ド・バレエの白鳥に弓矢を放とうとするのを王子とオデットが止めるという場面があり、コール・ド・バレエの娘たちはその時点で白鳥の姿だったことになるので、オデットだけ人間の娘の姿に戻っていたというのは不合理とも思われること等の事情もあるので、白鳥の姿と人間の姿との変化についての断言は難しいのですが、白鳥の姿のままのオデットに恋をするanimal love王子はいただけないと思います。

 

第2幕の湖畔の出会いの場面で、オデットと王子の心が通い合うプロセスの表現…オデットの畏怖、疑念、好奇心、好意への変化をオデット役と王子役に、それぞれどのように表現してもらってもよいのですが、観客に説得力のある表現をしてもらいたいというところで、見たかったものを見せてもらったという気がしました。

個人的な趣味としては、オデットにもう少し王子の誠意に対する疑いをもって抵抗してほしかった気がしますが(したがって、王子役にも、もっと一生懸命、オデットに好意を伝えようとする表現をしてほしい。)、尻軽オデットになり過ぎず、かつ、こじらせ好きオデットにもならない範囲で、小野絢子さんの人柄に沿って、比較的素直に、王子の気持ちを受け入れるオデットが表現されていました。

 

小野絢子さんは、バレエ「こうもり」で、ベラがヌードで踊るという設定の妖艶なシーンで、ボディタイツで登場しても、清潔なアスリートの体操のような印象を与えるキャラクターなので、オディールが王子を誘惑する表現には限界がありそうですが、第3幕は双眼鏡で周囲には目もくれず、ずっとオディールをガン見していたところ、オディールの王子を見る目つきや王子を拒絶する仕草には、ずいぶん、オディールらしいところがあって、進化されていると思いました。吉田都さん、佐々木奈緒さんからの指導の賜物?

なお、オディールは、オデットと異なり、妖艶に、誘惑的に、というのが伝統的な演出なのですが、王子を騙すというロットバルト側の目論見からすると、オデットと大きく違う妖艶なオディールでは王子に気づかれてしまうおそれが大きいので、むしろ、オデットにできるだけ良く似せた振る舞いをさせなければならない、ともいえそう。

それに、オデットとあまりに違うオディールなのに、すぐに心惹かれてしまったというのであれば、ジークフリート王子の浮気性など人格に関わる問題点が出てきそうです。

もっとも、そもそも、この年代の男性はそういうものだとも言えそうです。

新国立劇場では、今年の夏休み期間に「白鳥の湖」を題材にして、お子様向けのエデュケーショナル・プログラムの企画があるようですが、特に、思春期の女の子たちには、ジークフリート王子のような男性から告白されて、それが真心からのものと思える場合であっても、持続的なものだと信じてはいけないという教訓を受け取ってほしいという気がします。

 

奥村康祐さんは、ノーブルな王子の踊り振りで、オディールの32回のフェッテ・ロンドゥ・ジャンブ・アントゥールナンの後、ア・ラ・スゴンドに脚を上げた連続ターンを見せてくれたのですが、オディール凌ぐほどの拍手喝采物でした。
 

第4幕、今回の演出では、コール・ド・バレエの白鳥達が、ロットバルトと戦う王子とオデットを守ろうとするような振付や王子の攻撃を受けて瀕死のロットバルトを白鳥達が舞台の袖に追い詰めて行くような振付があります。

白鳥達もロットバルトの魔法の被害者なので(me, too)、声を上げて攻撃する動きは当然で、この振付は、もっと発展させてもよいのでは、と思いました。