素晴らしい治療法のBNCTだが、ネックというか弱点は中性子源だ。実用的な強度の中性子ビームを得るのは結構大変で、現時点では原子炉に頼るしか良い方法が無い。そこで現在は京都大学の熊取の研究用原子炉と東海村の二箇所だけが使われている。
これを解消するにはどうしたらよいのだろうか。日本に55基存在する発電用や研究用の各種原子炉に照射用サイトを設置したらどうか?確かにそういった考えもあると思う。けれども、そういった高信頼運転を必要とする原子炉から中性子を取り出したりすると、原子炉の運転状況が変わってしまい運転特性で読めない部分ができるとか、逆に原子炉の出力変動が医療用の照射のタイミングと合わないので、強度の調整ができず危険、とか対テロ対策とか、患者さんや治療関係者の放射線防護、原子力関係者の感染防護などを考えると、現実的にはほぼ不可能だ。
そこでもう少し手軽に照射できないか、という事で加速器を使用した中性子源がいくつか考えられている。日本国内で最初に名乗りをあげたのはFFAGではないだろうか?これはサイクロトロンに少しシンクロトロンの機構を使って大電流を可能にした装置だ。概ね10MeV前後まで陽子・重陽子を加速するもののようだ。だが、私はこれは直感的にあまり良い方法とは思えなかった。原理は問題は無いと思うが、病院で日常的に使用するには少し装置が大きすぎる。
また、「メガ電子ボルトの陽子」なんて簡単に言うけれども、加速器を運転する電気代もバカにならない。大電流なんて言うけれども、1MeVは100万ボルト。1mAだって1KWになるのだ。
化学エネルギーの10万倍~100万倍も強い核エネルギーレベルの重粒子を打ち込んで核をバラバラにして中性子を取り出す・・・この加速器を駆動する電力は石油を燃やして得られたものなのだから、非常に効率が悪い。
そこで私とその仲間は現在加速器駆動dd核融合反応をベースにした中性子発生装置で検討してみようとしている。この反応は核融合で発熱反応である。従って反応を引き起こす(駆動に必要な)エネルギーよりも出てくるエネルギーのほうが大きく量子エネルギー効率が良い。つまり必要な運転エネルギーを小さくできる可能性がある。(しかし反応確率を高めるのが問題だが・・・)
核融合の中でもDT(重水素とトリチウム)の反応は数10KeVの医療用レントゲン装置程度の電源で加速した重陽子でも反応が起こる。そこでざっと過去の文献を見てみると、発生点で10の14乗個という、なかなか実用的な数字が出ている。
これは大変素晴らしいのだが、問題はトリチウムだ。これは水素の同位体で環境に広がると人体にも浸透して行き、体内の分子に組み込まれて内部被爆を引き起こすという、かなり厄介な物質だ。その上、核爆弾の威力を高めるのにも使えるので、核拡散の防止のためにも無闇に動かせない。
従ってトリチウムを使用する反応は、一筋縄では行かない。
そこで、次に検討したのはDD核融合反応だ。これは重水素核同士を衝突させて核融合反応をさせる。この反応の閾値は概ね0.35MeVだが量子効果によって0.1MeV程度から確率が低いながら反応が開始する。
しかし残念なのが反応率の低さだ。DT反応と比較すると、30分の一から200分の一しか反応しない。同じ構造の加速管では中性子の出力が非常に微弱になってしまう。
また、実用まで単純に電流を増やそうと思うと、こんどは熱でターゲットが焼損しかねない。そこで冷却がきちんとできるようにターゲットの形状の工夫が必要になってくる。
(文:窪田 敏之)
これを解消するにはどうしたらよいのだろうか。日本に55基存在する発電用や研究用の各種原子炉に照射用サイトを設置したらどうか?確かにそういった考えもあると思う。けれども、そういった高信頼運転を必要とする原子炉から中性子を取り出したりすると、原子炉の運転状況が変わってしまい運転特性で読めない部分ができるとか、逆に原子炉の出力変動が医療用の照射のタイミングと合わないので、強度の調整ができず危険、とか対テロ対策とか、患者さんや治療関係者の放射線防護、原子力関係者の感染防護などを考えると、現実的にはほぼ不可能だ。
そこでもう少し手軽に照射できないか、という事で加速器を使用した中性子源がいくつか考えられている。日本国内で最初に名乗りをあげたのはFFAGではないだろうか?これはサイクロトロンに少しシンクロトロンの機構を使って大電流を可能にした装置だ。概ね10MeV前後まで陽子・重陽子を加速するもののようだ。だが、私はこれは直感的にあまり良い方法とは思えなかった。原理は問題は無いと思うが、病院で日常的に使用するには少し装置が大きすぎる。
また、「メガ電子ボルトの陽子」なんて簡単に言うけれども、加速器を運転する電気代もバカにならない。大電流なんて言うけれども、1MeVは100万ボルト。1mAだって1KWになるのだ。
化学エネルギーの10万倍~100万倍も強い核エネルギーレベルの重粒子を打ち込んで核をバラバラにして中性子を取り出す・・・この加速器を駆動する電力は石油を燃やして得られたものなのだから、非常に効率が悪い。
そこで私とその仲間は現在加速器駆動dd核融合反応をベースにした中性子発生装置で検討してみようとしている。この反応は核融合で発熱反応である。従って反応を引き起こす(駆動に必要な)エネルギーよりも出てくるエネルギーのほうが大きく量子エネルギー効率が良い。つまり必要な運転エネルギーを小さくできる可能性がある。(しかし反応確率を高めるのが問題だが・・・)
核融合の中でもDT(重水素とトリチウム)の反応は数10KeVの医療用レントゲン装置程度の電源で加速した重陽子でも反応が起こる。そこでざっと過去の文献を見てみると、発生点で10の14乗個という、なかなか実用的な数字が出ている。
これは大変素晴らしいのだが、問題はトリチウムだ。これは水素の同位体で環境に広がると人体にも浸透して行き、体内の分子に組み込まれて内部被爆を引き起こすという、かなり厄介な物質だ。その上、核爆弾の威力を高めるのにも使えるので、核拡散の防止のためにも無闇に動かせない。
従ってトリチウムを使用する反応は、一筋縄では行かない。
そこで、次に検討したのはDD核融合反応だ。これは重水素核同士を衝突させて核融合反応をさせる。この反応の閾値は概ね0.35MeVだが量子効果によって0.1MeV程度から確率が低いながら反応が開始する。
しかし残念なのが反応率の低さだ。DT反応と比較すると、30分の一から200分の一しか反応しない。同じ構造の加速管では中性子の出力が非常に微弱になってしまう。
また、実用まで単純に電流を増やそうと思うと、こんどは熱でターゲットが焼損しかねない。そこで冷却がきちんとできるようにターゲットの形状の工夫が必要になってくる。
(文:窪田 敏之)