http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/sympo/2010/pdf/ono.pdf

.pdfデータで見ることができる。医学写真が多く末期がんの写真などもあるのでグロいのが苦手な人は見ないほうが良いです。

しかし京大加速器の写真や中性子線エネルギースペクトルなど、かなり興味深い内容が公開されています。

(文:窪田 敏之)

本年は日本中性子捕捉療法学会の学術大会が徳島大学で開催される。

私としては歯科的に考えてBNCTを実用化する場合の諸問題を取り上げてみようと思う。特に中性子の照射では「放射化」という問題があるし、歯科では非常に多様な物質を使うために中性子との干渉が起こる可能性がある。

BNCTはまだ本格的普及前だし現時点では歯科の研究者はそれほど多くないので、今回は歯科全体を俯瞰して一般的に必要な内容を検討してみようと思う。

実際、中性子線は志向性が弱くあちこちに散乱するので歯科口腔外科や頭頚部腫瘍以外で脳腫瘍の治療でも干渉はできだけ避けたいところだ。

歯科で問題になりそうな物質は補綴およびインプラントで多用される。ちょっと列挙してみると

1.BNCT手術時に容易に除去できるもの

    義歯など

2.BNCT手術時に除去が難しいもの

    インプラントのフィクスチャー
    インプラント上部構造
    クラウンブリッジ
    コンポジット等充填剤

とこのようになる。まず本年度の研究では2番目のカテゴリーに該当する4種の歯科材料の構成元素の核種を列挙して、各々の熱中性子~熱外中性子の吸収断面積、放射化の程度などを検討してみたい。

ざっと見て問題になりそうなのはPFMに使用されているコバルトクロム合金だ。コバルトは放射化してコバルト60になるが、これは面倒な同位体だと思う。一旦生成すると半減期は5.3年。比放射能を考慮すると結構性質が悪い。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%8860

また防護法だけれども、ホウ素化合物、あるいはガドリニウム化合物など中性子の吸収性の良い物質を含むを含む吸収遮蔽材を開発してBNCT照射時に問題部位を覆ってしまうという事が考えられる。(このアイデアは桐蔭横浜大学の早川先生よりいただいた)

たぶん硼珪酸ガラスの微細粒を練りこんだ厚みが0.6mm程度のワックスシートのようなものが最も優れていると思われる。また歯科で普段使用しているユーティリティワックスのような硬さのものがあったらこれも使い易いだろう。

(文:窪田敏之)