もう引退してしばらく経つけれども、私(窪田敏之)の伯父貴で窪田哲昭という人がいる。この人は昭和大学の藤が丘病院の院長をした人で、専門は耳鼻咽喉科だ。耳鼻咽喉科は大学によっては頭頚部外科も行う。これは概ね眼窩よりも下、胸よりも上の悪性腫瘍や外傷を外科的に治療するものだ。

SPYSEEに少しだけ伯父の資料が載っている。

頭頚部外科の特徴は、腫瘍等で大きく切除を行った場合、審美的な障害が大きいので、回復のために再建を行う事だ。切り取ってしまった顔面を体の他の場所から取ってきた骨や皮膚を使用して再建を行う。患者さんもたいへんだけれども医師団の苦労も大変なものでぶっ通しで10時間以上にもおよぶ複雑な手術となり、気力体力を限界まで消耗するようだ。

BNCTはこの複雑極まる頭頚部の悪性腫瘍の治療にも一定の効果がある可能性が高い。実際、歴史上初めてBNCTを口腔がんに応用した大阪大学の加藤逸男先生のケースでは、劇的に悪性腫瘍が消退している。
(リンク先pdfの8ページ目の写真を参照)

伯父はもう引退はしたけれども、BNCTには興味を持っていた。伯父の昔の知り合いで今でも現役で活躍中の頭頚部外科医をご紹介いただき、訪問してみようと思っている。そのうちのお一人が東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科の加藤 孝邦教授だ。先週の水曜日にご訪問させていただいたので、次の記事でその時の様子を書こうと思う。

(文:窪田敏之)

岩手県の県庁所在地、盛岡にある岩手医科大学は医学部・歯学部・薬学部を擁する医学系の総合大学で地域医療の中核を担っている。

平成22年9月9日、大学時代の恩師、堀内博 東北大学元教授のご後輩にあたる坂巻公男教授にご挨拶に伺い、BNCTへのご協力をお願いに行った。

坂巻教授は歯学部の総合歯科学講座(歯科放射線学分野)の小豆島 正典教授をご紹介くださり、盛岡メトロポリタンホテルで懐石料理をいただきながらのお話となった。(坂巻先生、ご馳走様でした)

お二人とも温厚で優しそうな方で、お医者さんらしい雰囲気。BNCTについては既にご案内で、ご存知だったので、すこし突っ込んだ話しになった。特に現在照射を再開した茨城県東海村のJPR-4研究炉の照射枠が、まだかなり開いているということで、BNCTに適合しそうな症例が合った場合に患者さんにBNCTをご紹介いただけないだろうか、といったお話もさせていただいた。

次回は是非JPR-4の照射場を見学に行きBNCTの実際の応用に関してイメージを高めたり、現在の治療プロトコルの中で生かせるかどうか検討したいう話になった。

大変熱気のこもった充実した話し合いになり、有意義だった。その後南部せんべいを買い込むと盛岡市にお別れを告げ、恩師 堀内博先生に本日のご報告とご挨拶に行くために新幹線はやて号で一路仙台へと南下した。

(文:窪田敏之)







中性子を発生させるのはとても大変だ。そこで研究用原子炉で医療用照射をしてくれるところはとても貴重だ。現在日本には二箇所しかない。

大阪府の熊取町にある京都大学の実験用原子炉と、茨城県東海村にある日本原子力開発機構の原子力科学研究所の研究用原子炉、JPR4だ

しかし過去にはもう一基原子炉があり、活用されていた。これは現在川崎市麻生区王禅寺にある旧武蔵工業大学の研究用原子炉だ。この原子炉は超小型で放射能の生産量も非常に少ない。定格熱出力は100キロワットしかない。通常の発電用原子炉の熱出力が3ギガワット程度なのと比較すると3万分の一だ。

残念ながらこの原子炉は故障の復旧に費用がかかりすぎることから、約20年前に廃止され現在は燃料が無く運転できない。

このGeneral Atomics 社製の研究・教育用TRIGA-mk2型原子炉は超小型でコストも安く、世界中で研究用に使用されている。過去には日本で立教大学にも設置されていたし、トルコ・イスタンブール大学、タイ王国には2基、ベトナムには1基、その他これまでに世界24カ国で66台を販売したようだ。

加速器による中性子発生も良いのだが、コストと設置面積だけを考えたら、依然として、このような超小型の医療専用原子炉といった考え方も当然存在する。

医療専用の場合にはさらに小出力でも良いので安全性も高くなる。重水炉などにすれば超小型で自立的安定性の高い(暴走しない)原子炉を設計することもできるだろうし、このような原子炉の炉心は事務机よりも小さい。

東京都市大学の原子炉についてのホームページ

原子力辞典ATOMICAにはこの原子炉について、いくつかの資料が記載されている。

武蔵工大炉(MITRR) (03-04-03-03)

武蔵工大炉のあゆみと廃止措置計画 (05-02-04-14)

(文:窪田敏之)