重要記事なので、こちらにも掲載しておこうと思います。
元記事「BNCT用加速器その2 -実用性のある設計」
ここから ---------------------------
さて、ビーム精工社の技術者の三宅さんや電子工学の技術者の須田さんと色々議論を進めてみると、BNCTに最適な加速器はもう少し違うスペックなのかな、という事になってきた。
まず厚いチタンターゲット上での過去の測定結果を見るとDD核融合反応は1MeV以下のほうが入射する重陽子へのエネルギー依存性が高く、1乗以上だ。けれども0.8MeVから1MeV程度でちょうど一乗の比例関係になる。さらに先へ行くと1乗以下になる。つまり100万ボルト以上の加速電圧を使っても電圧を上げるほど電力あたりの中性子の収量が低下するのだ。
この値がピークになるのはおおむね800KV~1MV程度だ。
そこでコックロフト型の加速器を考える場合、加速電圧は最小100KV、最大3MVにして通常運転800KVを想定した。最大を3MVに設定したのはDD核融合反応以外にリチウムターゲットやベリリウムターゲットも視野に入れておきたいからだ。
実は加速器に設置する重水素イオン源(重陽子源)は陽極になるのだが、このターゲットの反対側でもエネルギーが上がるにつれて厄介な事が起こる。ターゲットに重陽子が衝突したときに弾き出された電子が陽電荷に吸い寄せられて陽極に衝突する。そして急ブレーキがかかってシンクロトロン放射を起こす。当然ながらこのエネルギーはほぼ加速用のエネルギーに程度になる。ということは3MVでは最大3MeV、10MVでは10MeVもの高エネルギーエックス線が発生する事になる。このエネルギーは大変なもので人為的に発生させたものだから「エックス線」と呼称するものの、もはや「高エネルギーガンマ線」と呼ぶようなエネルギーとなっており、これを遮蔽するのにサイズが大きくなってしまう。
加速電圧の上限を3MV程度にしておけば、こういった面倒な問題を軽減できる。
また加速器の実寸も考えなくてはならない。電極は全て絶縁体で被覆しておくので大きさは小さくしても良い。それでも受動的な安全性や熱容量は多少は考えたい。空気中での絶縁破壊安全距離は概ね1KVにつき0.8mm程度。このため1MVであれば80cmとなる。従って加速管の長さを概ね80cmないし1m程度にすれば800KVの連続運転では無難である。もっとも最大出力の3MVを印加すると空気は絶縁破壊するので開放電極では放電してしまうけれども。スキャン電極に必要な電圧を考えると加速管はもう少しは長くしても良いが、大きい装置では製造コストも高くなるのでバランスを考えなくてはならない。
加速管の直径は概ね10cm~15cm程度でよいのではないかと思う。というのも照射される人体の側の術野がほぼこの大きさになるからだ。そもそも人体で差し渡し10cmを超えるような悪性腫瘍ではもはや生存は難しいので、この大きさで十分だろう。
dd反応でBNCTに必要な中性子強度を得るには、これまで得ていたデータから外挿すると、概ね20mA程度。電力に換算して20KW~60KW。ターゲットは裏に冷媒を流して冷却する必要もあるし、あまり陽子ビームを絞るとターゲットが熱で溶解したり蒸発したりして穴が開いてしまう。また医療用の場合には分析用とは異なって、ビームが絞れている必要はないのでビームをスキャンして当たる場所を分散して発生する熱も分散を図る。
過去の実験データを見るとdd核融合反応は800KV付近では3.0×10の7乗個/マイクロアンペア程度の出力がある。20mA流すと2.0×10の4乗をかけると0.6×10の12乗個となり、実用の可能性が見えてくる。
またターゲットの工夫によって、さらに中性子出力をアップする事も考えられる。現在使用しているチタン電極は重陽子を吸蔵するのだが、マグネシウム等のように非常に吸蔵力の大きい元素も存在する。また同じく重陽子でベリリウム9をターゲットにすると、1MVで中性子の収量は概ね5倍になる。またリチウムをターゲットにすると7倍程度になっている。
また出てくる中性子の性質も考慮しなくてはならない。dd反応で出てくる中性子のエネルギーは2.45MeVとかなり高いので減速が必要だ。しかし減速器を通すと中性子が目減りしてしまうので、この分を多めに作っておかなくてはならない。
ある種の反応では80KeV等、初めからエピサーマル中性子に近い速度のものが発生する。この場合には減速器での損失は少なくなる。
リチウムターゲットで3MV運転では中性子の収量は一マイクロアンペアあたり1.5×10の9乗個。これを20mAでドライブすると最終的な収量は3.0×10の13乗個に達する。
この加速器の大きさは遮蔽設備と電源・冷却設備を除けば2畳程度の面積に設置できる。これならば地方の病院にも設置可能であってBNCT新時代のきっかけになると良いのだが。
(文:窪田敏之)
元記事「BNCT用加速器その2 -実用性のある設計」
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さて、ビーム精工社の技術者の三宅さんや電子工学の技術者の須田さんと色々議論を進めてみると、BNCTに最適な加速器はもう少し違うスペックなのかな、という事になってきた。
まず厚いチタンターゲット上での過去の測定結果を見るとDD核融合反応は1MeV以下のほうが入射する重陽子へのエネルギー依存性が高く、1乗以上だ。けれども0.8MeVから1MeV程度でちょうど一乗の比例関係になる。さらに先へ行くと1乗以下になる。つまり100万ボルト以上の加速電圧を使っても電圧を上げるほど電力あたりの中性子の収量が低下するのだ。
この値がピークになるのはおおむね800KV~1MV程度だ。
そこでコックロフト型の加速器を考える場合、加速電圧は最小100KV、最大3MVにして通常運転800KVを想定した。最大を3MVに設定したのはDD核融合反応以外にリチウムターゲットやベリリウムターゲットも視野に入れておきたいからだ。
実は加速器に設置する重水素イオン源(重陽子源)は陽極になるのだが、このターゲットの反対側でもエネルギーが上がるにつれて厄介な事が起こる。ターゲットに重陽子が衝突したときに弾き出された電子が陽電荷に吸い寄せられて陽極に衝突する。そして急ブレーキがかかってシンクロトロン放射を起こす。当然ながらこのエネルギーはほぼ加速用のエネルギーに程度になる。ということは3MVでは最大3MeV、10MVでは10MeVもの高エネルギーエックス線が発生する事になる。このエネルギーは大変なもので人為的に発生させたものだから「エックス線」と呼称するものの、もはや「高エネルギーガンマ線」と呼ぶようなエネルギーとなっており、これを遮蔽するのにサイズが大きくなってしまう。
加速電圧の上限を3MV程度にしておけば、こういった面倒な問題を軽減できる。
また加速器の実寸も考えなくてはならない。電極は全て絶縁体で被覆しておくので大きさは小さくしても良い。それでも受動的な安全性や熱容量は多少は考えたい。空気中での絶縁破壊安全距離は概ね1KVにつき0.8mm程度。このため1MVであれば80cmとなる。従って加速管の長さを概ね80cmないし1m程度にすれば800KVの連続運転では無難である。もっとも最大出力の3MVを印加すると空気は絶縁破壊するので開放電極では放電してしまうけれども。スキャン電極に必要な電圧を考えると加速管はもう少しは長くしても良いが、大きい装置では製造コストも高くなるのでバランスを考えなくてはならない。
加速管の直径は概ね10cm~15cm程度でよいのではないかと思う。というのも照射される人体の側の術野がほぼこの大きさになるからだ。そもそも人体で差し渡し10cmを超えるような悪性腫瘍ではもはや生存は難しいので、この大きさで十分だろう。
dd反応でBNCTに必要な中性子強度を得るには、これまで得ていたデータから外挿すると、概ね20mA程度。電力に換算して20KW~60KW。ターゲットは裏に冷媒を流して冷却する必要もあるし、あまり陽子ビームを絞るとターゲットが熱で溶解したり蒸発したりして穴が開いてしまう。また医療用の場合には分析用とは異なって、ビームが絞れている必要はないのでビームをスキャンして当たる場所を分散して発生する熱も分散を図る。
過去の実験データを見るとdd核融合反応は800KV付近では3.0×10の7乗個/マイクロアンペア程度の出力がある。20mA流すと2.0×10の4乗をかけると0.6×10の12乗個となり、実用の可能性が見えてくる。
またターゲットの工夫によって、さらに中性子出力をアップする事も考えられる。現在使用しているチタン電極は重陽子を吸蔵するのだが、マグネシウム等のように非常に吸蔵力の大きい元素も存在する。また同じく重陽子でベリリウム9をターゲットにすると、1MVで中性子の収量は概ね5倍になる。またリチウムをターゲットにすると7倍程度になっている。
また出てくる中性子の性質も考慮しなくてはならない。dd反応で出てくる中性子のエネルギーは2.45MeVとかなり高いので減速が必要だ。しかし減速器を通すと中性子が目減りしてしまうので、この分を多めに作っておかなくてはならない。
ある種の反応では80KeV等、初めからエピサーマル中性子に近い速度のものが発生する。この場合には減速器での損失は少なくなる。
リチウムターゲットで3MV運転では中性子の収量は一マイクロアンペアあたり1.5×10の9乗個。これを20mAでドライブすると最終的な収量は3.0×10の13乗個に達する。
この加速器の大きさは遮蔽設備と電源・冷却設備を除けば2畳程度の面積に設置できる。これならば地方の病院にも設置可能であってBNCT新時代のきっかけになると良いのだが。
(文:窪田敏之)