しばらく大丈夫なつもりだった.


終わった実感もないけれど...



季節は相変わらずの冬で,
私の気持ちをすっきりは
させてくれない.




「ジュリア~
大丈夫になったよ.」




そんなメールが帰ってこないかと
期待して
やっぱり携帯を握り締めて
眠る日々.



留美ちゃんも,



「いい経験になったよ!!
樹里ちゃん更に綺麗になるよドキドキ
いっぱいこれからいい恋愛していこニコニコ」


そう励ましてくれた.



書いては消し
書いては消しした
未送信のメールたち...






なんて書いていいかもわからないくせに.








論文の締め切りも直前に迫り,
夜中にパソコンの画面の前で




「私はこれの為に
学歴よりも,卒業よりも
大切なものをなくしてしまったのかもしれない.」





そう,考えて
論文を書きながらでも
無意識に涙が頬をつたっていた.


leccaのなみだの日を聞きながら
本当に歯を食いしばって
忙しさで少しでも気がまぎれるように...




本当は何のせいでもないのに.


論文のせいにでもしなきゃいけない
忙しさを理由にしなきゃいけない
自分が悲しかった.











そんな毎日を送っていた.





笑顔でいようと決めたのに
やっぱり心の底からは笑えない.




そんな気持ちに優衣はすぐに気付く.





「今日はオシャレしてきて!!!
いいプレゼントがあるから」





そう,言われた.




何のことかわからぬまま,
いつものクラブへと連れ出された.





「別にいつも通りじゃん.」




そう思っていた.





何気なくエントランスのほうを見ると,




夢かと思った...




「涼太君??」






それは,就職でここを離れた,
私が好きだった人.






優衣のしてやったりな顔.





「どういうこと?!」






人形のような顔でウインクをした.





「久しぶりだね.」






その笑顔はあの時のままだった.





でも,幸人も知り合いの涼太君は
私が好きだった事実も知ってて,




「いつか2人で涼太君のところに
会いに行ったらビックリするだろうね.」




なんて話してた.


涼太君を見ても
そんなことばかり思い出す始末.





でも,やっぱり素敵だった.
涼太君にはきちんとした気持ちも話せず,
むしろ憧れに近かったから.
その時の気持ちも話していたら
よみがえってきた.





初めてNe-yoを知ったのは
涼太君からだった.
偶然にもその曲が流れる中で.


「相変わらず涼太君素敵だね.」




「そう?
今じゃ忙しいサラリーマンだよ.」




「ううん.
すっごい,かっこいい.
私,あの時ずっと好きだったんだ.」




そんなことさえさらっと言えた.
涼太君が過去になった証拠だと思った.



「ありがとう.俺よりいい男一杯いるよ?」






「私には涼太君は特別なんだ.」





「俺も,樹里ちゃんは特別な後輩だよ.」






その言葉が嬉しすぎた.



「優衣ありがとう.」



人目も気にせず抱きついた.



いい感じのアルコールと
視界には涼太君がいる.




久しぶりに楽しいイベントだった.




「樹里,次の恋しよ!!!
外に目を向けたらいい男ばっかりだって!!
こうやって笑ってるほうが似合ってるよ.
いい女なんだから
ハッピーなオーラ出してなきゃ.」




「うん!!
ありがとう.
私,涼太君に会って進める気がした.

本当最高のプレゼントだったよ!!」






こうして,色んな楽しいことを増やして行って,
ちょっとずつ思い出にしていこう.




終わった事実さえ認めたくない自分もいるけれど...





そして,いつか
こんな恋もしてたなって笑って思い出せるように.




いつか街ですれ違って
いい女と恋愛したなって思ってもらえるように.
「昨日はちゃんと話できた!?」


さすが優衣.
幸人の家を出てすぐのタイミングで連絡が来た.




「うん!!ちゃんと終わらせてきたよにひひ」





すぐに携帯がなった.



「樹里!!
まっすぐ家にきな!!!」
そう呼んでくれた.




「優衣...」





私はどれだけ泣けば気が済むんだろう???
涙は本当に枯れてくれない.
もう,サングラスでも
隠せないくらいに.






「つらかったね...」





そうずっとなぐさめててくれた.
昨日の出来事から一つずつ
全部話し終わるまで.

ケツメイシの恋の終わりは意外と静かに
が自分とリンクして涙が止まらない.







「でもね,
ちゃんと,ホント好きだったっていってきたよ??」





「よく頑張ったよ.」

そう言って話し終わるころには
優衣の方が号泣してた.




「あーぁ.
ハチ公もっとできる子だと思ってたのにな..」

そうつぶやいた私に優衣の笑顔は優しかった.






「でも,思ったんだ.
幸人に会ってなかったら
こんなに女友達の大切さもわからなかった.



優衣にもごめんね??
ずっと前,優衣が悩んでた時
苦しさ全然わかってあげれてなかった.
わかったつもりでいただけだった.」



「ううん.
樹里は最高の女友達だよ!
祐介と居れるのも
樹里がいたからだもん.」




「恋愛って2人でしてるような気になってるけど,
きっと友達とか
支えてくれる人いなきゃ
できないものなんだよね....」







こうして2人で
泣き続けた.







「私,でも幸せだよ??
だってこんなに誰かを好きになれたんだもん.
私自分が絶対こんな気持ちになれるなんて
思ってなかったから.」




その日も緊急集会にしてくれて,
久しぶりに集まった
美奈に真理奈に梨花に優衣と私.
どんなに忙しくても
こうした緊急事態には全員が来てくれる.




「樹里を独りにはさせないからね!!!」
そう美奈が言ってくれた.





私は久しぶりに
ちゃんと笑えた.



みんながいればしばらくは大丈夫だって思えた.




最近支えになってた
コースケにも



「コースケー!!!首輪外してきたよ!!!」





そう電話をすると
大爆笑しながらも




「樹里よくやった!!!
ご褒美やるぞ.」




そのふざけた感じが
私を楽にしてくれた.





そして,報告する人がもう1人.

「マッキー?
昨日はありがとう.
幸人とね,お別れしてきた.」




「マジ?!
そっかぁ.」




「でも,大丈夫だよ.
マッキーとケントさんいてくれて
おかげで楽しかった.
幸人にとってマッキーは大事な友達だから
これから私の分まで支えてあげてね.」




「任せてよ.近いうちまた遊びにおいで.」



「うん.」




その一言で
幸人の友達とも会えなくなるんだなって実感した.
大好きなお兄ちゃん達...




「これから,私の道進まなきゃ.」




そう,自分に言い聞かせた.


女だけの
みんなのハチ公卒業パーティは
暖かくて,
みんなのためにも,
笑っていようって決めた.
泣きながら幸人の家へと向かった.
クラブで散々飲んだせいで
感情のコントロールがきかない....





玄関を開けた幸人の顔は
もう,今までとは違った.





ストレスと将来への焦り...
穏やかな幸人ではなかった.




相変わらず
音楽もない部屋...





壁に貼られていたはずの
ずっと私達を見ていてくれたはずの
2PACのポスターでさえなくなっていた.




会話もちぐはぐ.





「なんか,ごめんね.」







もう,私にはそんな言葉しか出てこなかった.
初めて幸人の前で泣いた...







「なんで樹里ちゃんがあやまってんだよ?」





「もう,わかんないよ.」





そばにいるのに,
触れることさえできない.

ここのところ毎日
願い続けた瞬間なのに
その日々以上に遠すぎる.






もう,会話も通じなかった.






何かを抱いて飛び込むには
バカになれるほど若くもない.
そんな幸人のもどかしさが
つらすぎた.








苦しすぎて
つらすぎて,
でも,やっぱり幸人がいる
安心感.





でも,眠るのも
もう,一緒でもなかった.






朝早く目が覚めて,
幸人を抱きしめることができない代わりに
彼のダウンを抱きしめて.
この香りを忘れたくない.
そして,
このダウンに付いた,
私のCHANCEの香りを
忘れて欲しくない....






「ねえ,幸人?」



もう,目を合わせて会話もしない.




「私,苦しいよ?
こんな状態.
待ってろって言ってくれたら,
ずっと待ってるよ??」








返事は,ない.








「でも,私,
何も言われないこの状態で
1人で居れる自信ないよ...」










嘘ツキ......
1人でいれる自信なんて

ホントはあるのに.








「うん.」








今ならわかる.
どんなに幸人のプライドを傷つけたか.
こんな時に
待ってろなんて言えるほど
無責任じゃないから
私は好きだったのに
責めたてた.







「ねぇ...」





もう,声にならなかった.












「ごめん,今は独りにして...」











「わかった.....
でも,私,








本当に





ホントに










幸人が好きだった....」















「ごめん...」











「もう,ごめんとかいいよ...」











そして部屋を後にした.










「本当に終わったんだ...」
















あまりに
あっけない終わりに,



小さすぎる私がいた.