極私的映画と音楽のススメ -19ページ目

極私的映画と音楽のススメ

印象に残る映画には印象に残る音楽がある。
思い出の名場面に流れていた音楽、言葉などをご紹介


自分らしさってなんでしょう。



それは自分自身を支える一本の支柱のようなものでしょうか。


これがしっかりとしていれば、絶対ぶれることがないですし、

いろんな意味で生きるうえでの糧になるものだと思います。



昨今は、この支柱をしっかりもてない人が増えているような気がします。


だから、プレッシャーにも弱いし、ちょっと困難にでくわすと

たちまち倒れてしまう。



その支柱は、自分の能力だったり、成長しているという自信だったり

もしかすると愛する女性だったりするのかもしれません。



そんな支柱を失い、自分自身を喪失してしまったら。

厳しい現実から目を背け

きっと、すべてのことに自信が持てず、無気力な毎日を送ってしまうのかもしれません。



この映画は、自分にとって大切な支柱である家族を失った男が

家族を捜し求める過程を描いた映画です。

それはすなわち自分を探す旅です。



男の内面を映し出したかのような砂漠の風景。

息子との出会いによる自己の回復



その過程によって、男は自分らしさを取り戻し、

支柱を身につけていきます。



だからこそ、愛した女性が、今は違う世界に生きていることを

見せ付けられても、落ち込んだりせずに、

新たなる一歩を踏み出すことができたのだと思う。



それにしても、マジックミラー越しに元妻と2,3の言葉を交わす場面で

流れる時間はきわめて濃密です。

今でも愛し合っているということが伝わる数分間でした。

この時間で、二人はお互いの気持ちを確かめ合い、なおかつ別れを選択していきます。


本当に素敵な数分間です。


とってもつらいのだけれど、とってもポジティブです。




自分らしさ。

それさえ、しっかり持っていれば、たいていのことは大丈夫。


皆さんにとっての自分らしさって何ですか?



頭から消し去りたい記憶ってないですか?



あんな失敗、あんな出来事。

そんな記憶って結構ありますよね・・・・・



そんな記憶を消し去ることができる仕組みがあったとしたら・・


そんな架空の世界を描いた映画です。



ケイト・ウィンスレット演じるクレメンタインは、感情の起伏が激しい女性。

ささいなことから喧嘩して、彼(ジム・キャリー)の記憶を消し去ってしまいます。



そんなことに気づかないジム・キャリーは、最初はとまどうものの、

クレメンタインが記憶を消してしまったことに気づきます。


そして・・・


彼もまたクレメンタインの記憶を消し去ろうとします。



そんなところから始まるストーリー。

徐々に過去へとさかのぼりつつも、過去と現実をいったりきたりする構成。


最初はわかりにくいけど、構成がのみこめてくると、しだいにのめりこんでいきました。





結局のところ、記憶を消すというのは、機械による外的な操作なわけです。

そんな機械の力でも消し去れない思い。


それこそは、人が人を思う真剣な気持ち。



ジムは、彼女の記憶を消そうとする過程で、

過去の記憶をたどる旅に出て、いかに彼女との出会いが運命的なものだったか、

いかに彼女の存在が大きなものだったかに気づいていきます。




結局記憶は消されてしまうのですが、

ラストには、機械に勝つ人間の根源的な思いが、描き出すまさに運命的な

奇跡のような展開が待っています。



このラストをみるにつけ、人が人を思う真剣な気持ちが奇跡を生み出すし、

それが、人と人を結びつけるんだなということに気づきました。




運命

奇跡



これは待っているだけでは、

期待しているだけでは絶対に訪れることがないもの



どれだけその人のことを思えるか。

どれだけ自分自身の未来を信じることができるのか。



そんな思いが根底にあればこそ

奇跡は起きるんでしょうね。



見終わってとても素敵な気分になれる映画です。

ぜひご覧になってくださいね。


「久しぶりに面白い映画をみたなあ・・」

見終わったときの感想です。



この映画、とにかく面白い


日本の研ぎ澄まされた極限美のようなボケや、間が
あますところなく繰り広げられているのんですよ。


この間を映画の中で体現しているのが
主人公ナポレオン・ダイナマイト。

この名前で笑わせようとして、頭をひねったとしか思えなくて、
しかも見事に外しているネーミングを見るにつけ、
この映画の魅力が十二分に伝わってくるというものです。
(あまりにも面白すぎて、日本語があやしくなってますね・・)


ぜひ、この絶妙な間をご堪能あれ。


あと、映像がものすごく綺麗なのも特筆すべき点。
空気が澄んでいるというか、
田舎に行ったときのあの空気の匂いを嗅ぎ取ってしまったくらい。


絶妙な間と、素敵な映像。
口コミで広まっていったということが良く分かる秀作です。



しかし面白いなあ。
終盤のナポレオン・ダイナマイトのダンスは必見ですよ!!



これを見たら一日のつかれなんて吹き飛ぶに違いありません!!




でも、あきらかに電車男をもじったとしか思えないタイトルはいただけないですね。

まったく別物ですし。

シンプルにナポレオン・ダイナマイト!の方がよかったかもしれないですよね。


小津安二郎監督の最後の作品。


おなじみの笠智衆に、岩下志麻(かわいい!)、そして佐田啓二が出演。


結婚適齢期を迎える娘の、結婚までの顛末をユーモアたっぷりに

描いている。


佐田啓二の兄貴っぷりもいいし、

岩下志麻のはつらつとした演技もいい。


でも、一番胸を打つのは、父親役の笠智衆の演技。


娘をもった父親にはいずれ訪れるであろう宿命的な娘との別れ。

そんな状況に遭遇する父親像を巧みに演じている。


この映画にもいいシーンがたくさんあって、

加東大介や岸田今日子とともに、笠智衆が軍艦マーチを聴くところとか

もと教師の東野英二郎を囲む会の風景とか、

戦争の記憶がまだ新しい時代だったことを十分にうかがわせるし、

そこから自立して、高度成長時代に突入していく日本の姿なんかも

垣間見れたりする。


ラスト。

娘の結婚式の夜。

帰りたくないかのように仲間と飲んで、

酔っ払って帰ってくる父親。

洗面台で水を飲みながら、ひっそりを涙をながす・・

そのシーンに心を打たれます。


小津監督の遺作となったこの作品。

これから、親になろうとする方は必見です。






※このブログは加筆・修正版です

(小津映画をご紹介したく、再録しました。

 投稿:2005/8/6、加筆修正:2006/4/11)


※2005年秋掲載時の文章です。

  ご了承くださいね。


もう9月ですが、まだ残暑が厳しいですね。


先週あたりまで昼間は、気温も高めで、夏のようでしたが、
最近、特に夜はめっきり秋の気配が漂いだしました。


もう鈴虫が鳴いております。


涼しい夜半に、ベランダで虫の声を聞きながら、お茶を飲む。
それはもう、至福のひと時ですよね。


そんな秋の訪れを感じさせてくれる作品をご紹介いたしましょう。

それが表題作。


小津監督晩年の作品。


原節子は、これが最後の小津作品となりました。



かつての愛人のもとに通い詰める道楽者の老人と、彼の周りであたふたする家族を
描いています。


今回は松竹を離れ、東宝にて撮影したとのこと。
昔の日本映画事情では、映画会社によって監督、俳優の囲い込みがあったんでしょうか?



この作品では、司葉子が出演していますが、前の作品『秋日和』で、
東宝から司葉子を借りたお礼なんだそう。

(司葉子)



映画は、冒頭から、コメディタッチですすむんですが、
終盤に進むにつれて、死生観とか、無常観が漂いだしてくる。


自分自身の人生を振り返りながらカメラを回し続けたのかとも思えるような、
いってしまうとダークなラストではあります。



カラスがいたりとか、火葬場の煙突から出てくる煙の感じとか・・



秋の風景を人生の流れに置き換えてみたかのような
雰囲気ではありますが、場所は変われど、小津監督のカメラショットは健在で、
素敵な風景を切り取って見せてくれます。


ちなみに、原節子さんは、喪服姿でとてもきれいでした!



※このブログは加筆・修正版です

(小津映画をご紹介したく、再録しました。

 投稿:2005/9/20、加筆修正:2006/4/10)

小津監督の映画は、その後、日本がどんなふうになっていくのかを

提示してくれるかのようだ。

かといって、つらさや痛みなどなく、のんびりとした風景の中に、

ユーモアたっぷりに描かれているからすごい。


この『彼岸花』という映画は、家長としての父親の威厳が、明治、大正、

昭和初期と比較して弱くなりつつあるさま、まあ父権の損失が

描かれている。


娘の結婚に反対する父、その父をおもしろおかしく説得する友人・・・


この時代、都会でも、人の絆は確かにあったんだなあと

なんだかそんなことまで考えてしまった。



音楽もすばらしくて、この雰囲気に華をそえている。



都会の冷たい風に吹かれているなあと感じる方、

仕事、仕事でプライベートが充実していないと感じる方、

実家を離れて生活している方。


いそがしい現代日本人はぜひ、小津安二郎の映画を見てほしい。

きっと、わすれていた笑顔を思い出すことができますよ。



※このブログは加筆・修正版です

(小津映画をご紹介したく、再録しました。

 投稿:2005/7/16、加筆修正:2006/4/10)

この時代

太平洋戦争に突入する前なのですが・・・


こんな時代にも、こんな家族ドラマがあったんだなあと感慨深くなりました。



それは、都市部に住む子供たちを

たずねて母親と末の娘がやってくるところから始まります。


この母親と娘を兄弟たちが露骨に嫌うんですね。

自分の生活に踏み入ってくるなと。

自分の生活を邪魔するなと。


肩身を狭くして居候していた母親と娘のところに

やってくるのが、親思いの息子。


彼は満州かどこかから、戻ってくるんですね。

そして母親と末の娘の境遇を見て兄弟たちに怒りを爆発させるんです。


それでも実の息子か!

あなたたちがそんな風にするなら、お母さんと妹は僕が引き取る!!って。



それで兄弟たちも改心して、

母親たちはこの満州帰りの息子のところで暮らしていく・・というハッピーエンド。



これって最近のドラマとかで

よく見たりしません?


正義に燃える息子

虐げられる母親

無常な兄弟たち



いつの時代も

根本的な人の心は変わらないんだなあ



そんなことを考えてしまった。

初期の傑作ですね。


日本映画界に欠かせない名俳優といえば笠智衆。



生まれは熊本。明治37年だそうですね。

お寺の次男坊として産まれたんだそうです。

だからこのような名前なんでしょうね。


男はつらいよの御膳様役でも有名ですが、

彼の真骨頂といえば、やはり小津作品でしょうか。


代表作のほとんどに出演しています。



演技がどうこういうよりも、

どんな脇役でも、鮮烈な印象を残すことの出来る稀有な存在だったような気がします。

『小早川家の秋』なんて、最後のほうにちょこっと出演するくらいですが、

なぜか、川原のシーンが印象深く残ります。


高度成長期の日本の父親像を投影したかのような俳優さんだったと思います。



独特の口調がいつまでも頭に残ります。


彼の演技を見るために、小津映画を見るというのもいいかもしれませんね。



ヴィム・ヴェンダースの『東京画』にも出演。

世界的に有名な俳優といえるでしょう。


彼の口調に感じられるやさしさがたまらなく好きです。


ぜひ出演作をご覧になってくださいね。


※このブログは加筆・修正版です

(素敵な俳優をご紹介したく、再録しました。

 投稿:2005/12/12加筆修正:2006/4/8)


家族のつながり。


この言葉をきいて一番最初に思い出してしまう映画。

それが表題作。


核家族化。

これによる、都会への人口集中。

地方の過疎化。

50年代~60年代にかけて、日本という国が戦後復興を掲げて

大きく成長しようとしていた時期。

庶民の生活には、おだやかに、しかししっかりとした歩調で

核家族化の波が押し寄せていた。


息子たちと離れて暮らす老夫婦。

久しぶりに上京するも、居場所が無い。

息子たちは、仕事が忙しい、時間がない・・


今の社会でごく普通に起きている出来事の萌芽がすでにこの時代に見て取れる。



このややもすれば、暗くなりがちなテーマに光を添えている存在。


それが、原節子の存在だろうか。


実の親でもないのに献身的に両親の世話をする姿。

だれもがその姿に心を打たれる。


最後の尾道のシーン。


一人で団扇を仰ぐ、笠智衆。

電車で去っていく原節子。

それを教室から見送る末の娘。



うまく言葉にできないけど、

どろどろとしていたものが、この瞬間、吹き飛んでいて

さわやかな風が流れてくるの感じる・・そんなラストでした。



小津監督の中ではおそらく一番有名な表題作。

しずかに、じっくりと見てみてください。


そして、自分の両親や祖父母のことをすこし思い出してみてください。



※このブログは加筆・修正版です

(小津映画をご紹介したく、再録しました。

 投稿:2005/9/13、加筆修正:2006/4/8)


小津安二郎の映画を初めてみたときに、

思い起こしたもの。


それは、小さいとき自分が見ていた無限とも思えるような風景と

そのときの父母、祖父母の顔だった。


現在、地元を離れて暮らす僕は、とっても、ものすごい郷愁を感じたのだ。


この映画は、古きよき時代の大家族が、結婚、転勤などで離れ離れに

なり、核家族化が進んでいく様を、

これをメインテーマにすえながらも、結婚騒動が主軸となることで、

ユーモアたっぷりに描いている。


映画のタイトルバックで流れる音楽も、妙に明るくて、

小気味いい。


映画の中ででてくる北鎌倉、銀座、・・・当時の日本が持っていた情景、

現代の日本が失った風景。


小津安二郎の映画を見ていると、なんだかとっても懐かしい感じがする。

それは、きっと、だれもが少年時代に過ごした日々の、大切な思い出が

投影されているからなんだろうな。


みなさま、家族は大切にしてくださいね。




※このブログは加筆・修正版です

(小津映画をご紹介したく、再録しました。

 投稿:2005/7/9、加筆修正:2006/4/7)