『WATARIDORI』(仏) | 極私的映画と音楽のススメ

極私的映画と音楽のススメ

印象に残る映画には印象に残る音楽がある。
思い出の名場面に流れていた音楽、言葉などをご紹介



鳥が好きです。


だれもが、小さいときに、鳥のように大空を飛んでみたいっ!って

思ったことがあるんじゃないでしょうか?


実家は山に囲まれた、ものすごい田舎にあるんで、ちょっと近くの丘に登ると

町全体が見渡せます。

その上をとんでいく「とんび」とかがうらやましかったものです。



単純なんですが、今でも、同じことを感じる瞬間があります。


たとえば、新宿の高島屋タイムズスクエアの映画館の美容院のある辺りに大きな窓が

あるんですが、その窓の高さを、名も知らぬ鳥たちが悠々と飛んでいくのを見たときとか、


雲ひとつ無い大きな青空の中を泳ぐように飛んでいる鳥を見たときとか。




この映画を見たときも、まさに同じ感覚に包まれました。


なんとまあ、どうやって撮ったんだろうと思わせるシーンばかり。



いろんな種類の鳥たちが、いろんな場所を飛んでいく


ただそれだけなのに、不思議と、

鳥たちの力強い生命力の躍動と

自然の無言なんだけれども、力強いたくましさの胎動なんかを感じてしまう。



パリのセーヌ川を行く鳥たち。エッフェル塔と鳥の構図がなんともいえない。

アメリカの荒涼とした大地を行く鷲たち。

海岸で魚をとる鳥たち。

中国のまるで水墨画のような風景の中を行く鳥たち。



自然の中に溶け込んでいる鳥たち

人工物の中に溶け込もうとする鳥たち



本当に力強い生命力を感じてしまう。



これをさらに印象的にしているのが、バックで流れている音楽。


まるで大地の奥深くから響いてくるようなこの印象的な音楽が、

見事に背景の自然と、とんでいく鳥たちを結び付けている。



自然の大きさ、雄大さ、そして怖さ。

それに立ち向かう鳥たちの力強い生命力。


これらを一切の装飾を加えずに、見せつけてくれる名作だと思います。




ちなみに、監督は、『ニューシネマパラダイス』で大人になったトト役を演じていたジャック・ペラン 。

この映画の素敵なラストシーンで、すてきな涙を流していた方です。


きっと、この映画を撮りながら、鳥たちの生命力の強さに涙を流していたんじゃないかな。

そんな風に思います。