背中が痛い…
自分の体が全身心臓みたいに鼓動している。

辺りの音が心音でかき消されて、まるで聞こえない。

体も思うように動かない…


有紀乃が何か必死に訴えている。

蒼一「何? 聞こえないよ」


有紀乃「さっきの男が近くに居る…怖いよ…」


さっきの?


痛みで薄れていた意識が一気に戻ってくる…


あいつだ…


脳裏にはあの、鉄パイプを真っ赤に染め上げたスーツの男が浮かんだ。



ヤバい…
こんな状態で襲われたら!

蒼一「…逃げるぞ」

有紀乃「…うん」


俺達はその場からゆっくりと離れる。



かなり慎重に動いたのに、ガラスを踏んでしまった。


さっきまで響いていた鉄パイプを地面に擦る音が途絶える…


バレたか!?

荒くなる息をこらえて俺はゆっくりと瓦礫から顔を出す…

あいつは…居ない…。


蒼一「大丈夫、あいつは居ないよ」
そう言って瓦礫から完全に体を出す。


その時、近くからガラスを踏む音がする…

ジャリッ…

俺からちょうど死角にあたる所からあいつが現れる。

幸い俺達自身には気づいていないみたいだ。


とっさに瓦礫から飛び出している鉄筋を掴む。


俺は助かりたい一心でスーツの男に鉄筋を全力で振りかざした。

蒼一「このぉっ!!」

鉄筋はスーツの男の肩辺りを直撃する。


スーツの男「うぐッ!?」


男は悶絶し、のた打ちまわっている。



俺は手に残った鈍い感触が気持ち悪くて、鉄筋を手放した。


蒼一「有紀乃、行くぞ!」

俺は有紀乃を連れてその場から離れた。




しかし、スーツの男はすぐ立ち直り追いかけてきた。


スーツの男「待てクソガキがっ!!」



そんな事言われて待つわけないだろ!
そう心で叫んでみるものの、俺は確実に距離を詰められていた。


ヤバいヤバいヤバい!!


俺と走っている有紀乃に先に逃げるように言う。

俺も必死に逃げるが、躓いてしまった。


思いっきりこける。
全身を激しく打ち付けて着地した。


急いで起き上がって後ろを確認する。



スーツの男が鉄パイプを既に振り上げていた。


もうダメだ……!


蒼一「…ッ!」

俺は訪れるはずの衝撃に備える。

有紀乃「イヤァアアアッ!!」
有紀乃の絶叫が聞こえる。



俺は両腕を頭の上に差し出して、目を閉じた。


スーツの男が高らかに笑った。
蒼一「クソォッ!」

こんばんは、静影です★


小説の第四話、ようやくアップ完了しました!


すごく眠いです…



なかなか体験ではないことですから、面白くないかも知れないです(ノ△T)



しかし、精いっぱい書かせて頂いております!




良かったらコメントを投下してご指摘頂けるとありがたいです( ̄∀ ̄)



それではお休みなさいです、はい。



もしかしたらまた深夜更新するかも…


とりあえず、いまから寝ます。

それでは(`∇´ゞ
スーツの男は、子供のみたいに震える女性に容赦なく、鉄パイプを振りかざす。

見ていられなくて、目を逸らす。

有紀乃の目を隠し、目を閉じる。


でも、甘かった。

ゴスッという鈍い音が聞こえる。
短い悲鳴の後、辺りは一瞬で静かになった…


周りが静かなせいで、さっきの女性の悲鳴が余計に耳についた。


目を開けてみる。
頭から血を流して倒れている女性がいた。



スーツの男はその女性への仕打ちに怖じ気づく事もなく、次の得物を探す。




次に殺されるのは自分達かも知れない…!


俺達はその場からゆっくりと気付かれないように離れる。


音を殺し、息すら止めて物陰に隠れる。


しばらくそこからスーツの男の様子を監視した。



スーツの男が俺達と逆方向に歩き出すのを見た俺は、この機を逃さないように急いでその場を離れる。



順調に逃げられていたのに、瓦礫に挟まれた男性に有紀乃が足を掴まれる。


近くで起こって惨劇の事を何も知らない男性は「助けて!」と大声で求めてきた。

何も知らないから仕方ないのかも知れないけど、俺が静かにするように言ってもまるで聞く様子がない。


それどころか、更に声を荒げて助けを求めてくる。



当然、この男性の叫び声に気づいたスーツの男が、真っ赤になった鉄パイプを持って俺達の方に戻ってきた。


大きな瓦礫に挟まれたこの男性を助ける余裕は俺達にはもうない。



俺は男性に有紀乃の足を離すように頼む。

しかし男性は一向に聞き入れない。

「ふざけんなっ! 俺を助けるのが先だ!」


俺は仕方なく、有紀乃の足を掴んで離さないその腕を蹴り飛ばす。



男性は悲痛な声とともに悶絶し、有紀乃の足から手を離す。


俺は有紀乃を連れてその場から走りだす。


背中の怪我のせいで早くは走れなかったけど、さっきの男性が先に襲われたようでなんとか隠れられた。


逃げ切った俺は安心すると同時に、さっき俺が見殺しにした男性への罪悪感が膨らんだ。



俺は未だにこの状況が信じられなかった。

たった数分で沢山の人が死んだ。


2人もの人間が目の前で殺された。


有紀乃も相当怖かったんだろう。
体を離さないように抱きついてきた。



俺はひたすら「大丈夫」と繰り返した。



辺りの静寂の中に、鉄パイプを地面に擦る音が響く。

少しずつ大きくなるその音に俺は気が付かなかった。