今週の前半は日帰り人間ドッグに行ってきた。これまで通っていた病院が人気で既に予約が埋まっており、今年は初めての病院を選ぶことになった。初めてといっても特に健康・医療マニアでもない私でも名前だけは聴いたことがあるゴージャスな病院で、受付に入るなり高級ホテルかと思うような内装。
もちろん、医療サービスも一流で一番不安な胃カメラもそれほど苦しまずに検査を終えることが出来た。人間ドッグというのは意外に待ち時間が多く、受診者の暇つぶし用に雑誌が置いてあるのが普通である。さすがゴージャス人間ドッグだけあって、ビジネスマンが読みそうな総合雑誌やビジネス雑誌が図書館みたいに並んでいた。今年に入ってからその手の雑誌をあまりフォローしてなかったこともありこの機会に片っ端から流し読み。
その時に思ったのが、半藤一利があちこちの雑誌で登場していること。もちろん昔からこの手の雑誌特に昭和史を扱った特集や対談にはおなじみの歴史家ではあるが、それにしても高齢にも関わらずこの働きぶりは凄いなと思っていた。最近はNHKでも引っ張りだこで「昔に比べるとさすがに老いたなぁ。大丈夫かなぁ。」と心配しながら観てたりする。
そんなことが頭の片隅にあったので昨日会社帰りに本屋でこの本を見かけたときにすぐレジに持っていってしまった。
いま戦争と平和を語る/半藤 一利

¥1,575
Amazon.co.jp
この本は題名と内容はあまり関係ない。内容は半藤氏の口述自叙伝。
半藤氏はどちらかというと歴史学者というより歴史の登場人物を批評するスタイルの人。歴史家というより歴史上の人物批評家だ。
文藝春秋出身者らしい人物月旦的なスタンスでの語り口は何か特定の歴史観を元にしてそれを押し付けるのではないから読者としては非常に面白い。東大時代はボート部でオリンピックを目指していたノンポリで、文藝春秋社に入社して記者として長く活躍。その中で少しずつ昭和史に関する勉強を続けて今では日本の近現代史に関しては一番の売れっ子作家になっているかもしれない。
あの名調子で昭和史の有名人物を語ることはあっても、半藤氏自身の人生について語られることはあまりなかったのでかなり面白く読めた。
・昭和6年生まれということで、戦争末期既に15歳になっていたため疎開させてもらえず中学に通いながら毎日勤労動員させられたこと。
・その為3/10の東京大空襲を身をもって体験したこと。被災して父の実家の新潟へ移住。
・東大卒業後文藝春秋社に就職し、左翼全盛の時代にひたすら旧軍関係者の取材や証言集めを続けていたこと。
・おかげであだ名が「反動さん」になってしまったこと。
・そんな反動さんだが今では、護憲を唱えただけで左翼呼ばわりされて苦笑していること。
とまあ、元々話上手な人なので自分の人生についても面白おかしく語る。
そして、戦後の有名な作家達の編集を勤めたこともあり、作家達のエピソードも面白い。
坂口安吾、松本清張そして司馬遼太郎。
もう半藤氏も結構いい齢なので本音でこうした昭和の大作家を語っているのが面白い。特に司馬遼太郎との関係はこれまで司馬グループというくくりで仕事をしてきたこともあってあまり本音で語っていなかったが、もう遠慮することも無いという覚悟でも出来たのだろうか結構ダイレクトな物言いで司馬遼太郎のことを語っている。
司馬遼太郎が何故ノモンハンを書かなかったのかという話は様々な憶測が流れたが、司馬の取材資料を引き継いで「ノモンハンの夏」を書いたと云われる半藤氏が初めて核心に近いことを発言している。とはいへおそらくまだ何か隠している物言いで、今回発言した理由だけじゃないのだろうがそこは墓場までもっていくつもりなのだろう。
ノモンハンの夏 (文春文庫)/半藤 一利

¥700
Amazon.co.jp
そういえばノモンハンといえば、半藤一利だけでなく田中克彦も「ノモンハン戦争」という本を書いている。
ノモンハン戦争―モンゴルと満洲国 (岩波新書)/田中 克彦

¥819
Amazon.co.jp
そのあとがきにも司馬遼太郎が登場する。あの田中克彦が無邪気な青年の様に自著のあとがきで司馬遼太郎とのエピソードを書いているのを読んで、ノモンハンというのは当事者にとっても大事件だが、その後の時代に生きた歴史家達にとっても大きな事件いや難題だったのだなぁと思ったものだ。
まだまだ明かされない事実もあり、それを追いかけている人たちにとっても終らない夏が戦後も続いていたのかもしれない。


