本作は、たまたま、amazonのkindle本の価格が割引されていて、
直木賞受賞作ということもあって、購入してみたんですが、
予想以上の面白さでした。
普段読まないようなジャンルの作品を読んでみることは、
掘り出し物に出会えるチャンスですね。
吉原一の売れっ奴の花魁だった葛城がある騒動を引き起こして、
忽然と姿を消した。その騒動について、ある謎の男が吉原に潜入して
関係者に次々に聞き込みをすることで、徐々に騒動の真相が明るみになっていく
・・・というストーリーです。
時代小説ということで、小難しい話なんじゃないかと、
とっつきにくい感じがしていたけど、全くそんなことはなかったです。
葛城花魁の関係者たち(見世番、新造、女衒、遣り手婆、馴染み客etc.)
のインタビュー形式で物語が進んでいくので、堅苦しくなく、
時代小説を読み慣れていない方にも、ハードルが低いと思います。
この関係者たちのキャラクターも個性的で人間臭くて面白く、
それぞれの事情や背景、吉原の常識やしきたりなども
サイドストーリーとして盛り込まれていて面白かったです。
私は、サイドストーリーがしっかりと書き込まれている作品が好きなんです。
この関係者たちのインタビューから、
葛城の素顔が徐々に明らかになっていくんですが、
肝心の事件の真相や謎の男の正体については、最後の最後まで明かされず、
ミステリー色が強いこともあって、最後まで飽きさせない構成も
良かったです。
今まで時代小説はほとんど読んだことがなかったので、
本作も読み終えられるか心配だったんですが、
そんな懸念がまったく不要で、
すごく面白くて、読みだしたら止まりませんでした。
松井今朝子さんの他の作品も読んでみたいです。