日本推理作家協会賞受賞作ということで、読んでみました。
シングルマザーの葉子と筑豊の廃坑部落で育った希美。重い過去を背負う二人が職安職員のほんの手違いによって出会い、友情を深めながら、ようやく平穏な生活が送れるようになったかと思えたが、それぞれが背負ってきた過去からは簡単には逃れられず、またその過去によって新たな事件が引き起こされる・・・という物語です。
とにかく救いがない物語でした。特に中盤頃に描かれる希美の廃坑部落での生活が地獄と言ってもいいほど凄惨で、高度成長期の影にこんな地域があったことに胸が締め付けられる思いでした。
本作はミステリー小説ですが、物語の初めから終盤までずっとホラー作品のように不穏な空気が漂っているようでした。著者の宇佐美まことさんは。ぞわぞわとした不穏な雰囲気を醸し出すのが上手いですね。宇佐美さんのプロフィールを見ると、ホラー作品も書かれているので、なるほどと思いました。
なんとなく物語の展開は読めてしまったけど、現在と過去が交互に語られる構成がよく出来ているので、面白く読むことが出来ました。