その人は自分しか信じていなかった
そして自分の力だけで巨万の富を得た
誰もがその人は凄い人だと言う
けれど私はその人の寂しさを垣間見たとき
とても恐ろしい人だと思った
「貴方のことは信用できない」
その人は雑談の際にそう言った
理由はよくわからない
でも信用に値しない人間だという烙印を押された私は静かにその人から離れようと思った
こういう場面で自分を信用してくださいなどと言うものではない
余計にその人の怒りを助長するだけだ
「そうですか」
私はそう言うと静かにその人から去った
これから先連絡が来ることもないだろう
だって私のことを信用していないのだから
寂しい気持ちもある
分かり合えたと思った瞬間もあったからだ
けれどそれは私の錯覚だったらしい
その人は他人の幸福をけなす
それが恐ろしかった
だから私はこの人から離れようとしたのだ
私だって人の幸福を喜べるほど心の広い人間ではない
けれど人の幸せは邪魔しない
それは最低限の人としての礼儀だからだ
その人は不幸なのだろうか
少しのことに幸せを感じれる自分はお気楽な人間だとその人から思われているのだろう
それでいい
拒絶されるのにはもう慣れっこだ
けれどこれから先
その人はずっとあのままなのだろうか
少し心が痛む


