少し前の事になるが、ニュートリノの速度が光速を超えているかも知れないという実験データが話題になった。
無論、これに関して、既に反論なども出されており、現時点では当該実験データの肯否は分からない。
ましてや私の様な門外漢が口出しすべきことでもないし、又、その様な能力もないので、ただただ他愛のない感想を此処に記す。
現代物理学は相対性理論と量子力学が基礎となっている。とは言え、相対性理論と量子力学は根底にある考え方の相違故か、甚だ相性が悪い。ただ、現在の所、それぞれの理論は観測事実を正確に記述できるという事で、その地位は揺らいでいないし、又、何とかこの両者を統合させようと、理論的試みが重ねられてきた。いわゆる、超ひも理論やM理論とかもかかる試みの産物でもある。
さて、相対性理論自体は光速不変の法則を重要な前提としており、又、当該理論から導出される結論として光速を超える物体の存在は認めることはできない。もし、存在するとなると、その物体の質量は式から無限大という事になってしまうからである。もっとも、量子力学におけるトンネル効果とか、一般相対性理論におけるブラックホール研究から導出されるワームホール(アイシュタイン-ローゼンブリッジ)などを考慮すると、二点間の移動において光速を超える事も全く不可能と言えなくもないが。ただし、先程、名前の出たワームホール(アイシュタイン-ローゼンブリッジ)に至っては専ら数学的可能性の域の話であり、物理的実在性には乏しい様である。
しかしながら、光子(フォトン)でもないニュートリノが光速を超えるという事がもし本当に事実であるならば、それは現代物理学の基礎、特にアインシュタインの相対性理論の見直しが必要になる事を意味してしまう。
思い起こすと、19世紀末期、イギリスの物理学者の大御所であったケルビンは、嘗て、古典的なニュートン物理学によって、間も無く、残された僅かな問題が解決されれば、宇宙の物理現象は悉く説明し得ることになるだろうという意味のスピーチで述べていた。だが、それから、間も無く、恐らくはケルビンから見ると、残された僅かな問題であったろう、熱力学の黒体放射の問題や光速の問題などによって古典物理学的世界観は崩壊した。
果たして、この度のニュートリノの問題は現代物理学の躓きの石となるか、或いは単なる実験の不味さによる誤りか、若しくは既存の理論によって説明されるのか、興味深い。