歓喜天考 | 徒然草子

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歓喜天、又は聖天は主に密教寺院で祀られている。著名な所として思いつく限りでは生駒聖天、山崎聖天などが挙げられる。かかる歓喜天は様々な現世利益を約束する神としてその信仰を集めている。
歓喜天の図像は単独尊のものもあるものの、主に信仰を集めてきたのは、男天と女天が抱擁し合うタイプのもので、又、それが故もあって、通常、厨子内に秘仏として安置され、その信仰の割にはあまり目にすることはない。
さて、抱擁し合う男天と女天は共に象頭であり、男天の方は、元来、魔神であり、女天の方は観音菩薩の化身とされている。その由来等については周知の事であり、わざわざ此処で書く程の事でもないので、省略する。
ところで、歓喜天の故郷であるインドでは、あいにく、上記の男天女天の抱擁タイプの像は見つかっていない。又、インド密教をほぼ忠実に承継したと目されているチベット仏教圏でも見当たらない様である。
歓喜天の基となったヒンドゥー教のガネーシャに目を移すと、ガネーシャにもブッディ、シッディなどの妃がいる様で、これらの妃を膝に載せている図像はシャクティー・ガナパティと呼ばれているらしい。だが、これらの妃の姿は決して象頭ではなく、通常の女性の姿をしている。
嘗てヒンドゥー教にはガネーシャを最高神として尊崇するガナパトヤ派という一派があり、彼らの手で『ガネーシャプラーナ』などの聖典が編纂されたが、これらの中にも日本の双身歓喜天に繋がる記述は無い様である。
となると、双身歓喜天の根拠は現存する限りでは唐代の菩提流支その他の手になる一連の関係漢訳仏典のみと言う事になる。
とは言え、双身歓喜天の起源の疑問については何ら解決は与えられていないので、結局、謎のままである。