▽出雲への移動
古事記:出雲國之肥河上
日本書紀第八段本文:出雲國簸之川上
一書第一:出雲簸之川上
一書第二:安藝國可愛之川上
一書第四:出雲國簸川上
まず、「河」と「川」では規模が異なります。
「河」は「大河」の様に「川幅が広い大きな河」、
「川」は「川幅が狭い川」となるので、
古事記と日本書紀の場所が必ずしも一致するとは限りません。
次に、「肥」と「簸」も異なると考えています。
「肥の河」は「肥料」などの様に「栄養が多く作物が育ちやすい河」、
「簸の川」は「箕みを左右に傾け、穀物の中に混ざっている糠ぬかや、
塵ちりをあおって取り去る。」の意味があり
「除去作業をするに適した川」と解釈出来ると思います。
次に、「安藝國可愛之川上」に関してですが、
一書第二のみの表記ですが、日本書紀の神代の記事では、
今回の一箇所のみが記載されていて、疑問に思っています。
古事記の上巻で「安藝國」など色々と検索して見ましたが、
該当の文字は検出されなかったので、情報源が気になる所です。
また、戦国時代で活躍した毛利氏の「安藝國」は
広島県なので「瀬戸内海」に面しています。
しかし、「出雲國」は島根県で「日本海」に面していて、
「瀬戸内海」ではないので同一地域と考える事は出来ません。
出雲國の「肥の河」、「簸の川」と安藝國の「可愛之川」が
古代において繋がっていた可能性があります。
繋がっていたとするならば、「瀬戸内海」側に「安藝國」が
存在したのではなく、「出雲國」の左右で「日本海」側に
存在した可能性が高いと思っています。
理由として「瀬戸内海」の航行技術は西暦5~6世紀まで
確立していないと言われている事です。
実際にどうだったのかは不明ですが、紀元前8世紀頃には、
まだ、危険な水域との認識があったと思いますし、
何より、貿易ルートは「瀬戸内海」ではなく「日本海」であったので、
「安藝國」は日本海側に存在したと言えると推測しています。
ただ、資料が不足している為に、
「安藝國」の存在した時期等を読み取る事は無理そうです。
▽オロチ
記紀の表記は下記の通りになります。
古事記:高志之八俣遠呂智(おろち)
日本書紀第八段本文:八岐大蛇
一書第二:八岐大蛇
一書第三と第四には「蛇」や「大蛇」とはあるが、
「八岐大蛇」と言う表記はされていませんので
同一と考えるのは間違っている可能性もあります。
△オロチとは?
オロチとは何か?を考える時、決まって「蛇」と言われます。
しかし、古事記には「高志之八俣遠呂智」と表記されるが、
正体が「蛇」とは一切書かれていません。
それに、参照のサイトを見て貰えると分る通り、
何も、「尾」があるのは「蛇」だけではありません。
参照:尾 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE
これらの事から考えても、
八俣遠呂智を「蛇」と考えるのは間違っていると思われます。
△オロチの正体
「蘿(つた)及び桧(ひのき)榲(すぎ)が生えて」や、
「八丘八谷」、「石松」など「蛇」よりも「山」全体と想像出来ます。
☆あかかがち
目に当る「あかかがち」は古事記:「赤加賀智」、
日本書紀本文:「赤酸醤」と表記され、古事記でも、
「此謂赤加賀知者今酸醤者也」と記述されている様に、
「赤加賀智」=「赤酸醤」と考えても問題なさそうです。
「かがち」は「ほおずき」と考えられていますが正しいのかは不明です。
「酸醤」の漢字から考えると、「酸っぱい醤(ひしお)」と受け取れます。
しかし、調べても「ほおずき」が「酸っぱい」と言う
記述は見つかりませんでした。
「ほおずき」は「えぐみ」があると言う記述もあり、
もしかすると、「ほおずき」ではなく「トマト」ではないかとも考えられます。
「トマト」であれば水分も多く、酸っぱいので条件に該当します。
ただ、紀元前8世紀頃の列島で「トマト」が存在したかどうかは
分からないので、他の食物かも知れません。
それと、「ほおずき」が違うかも知れない理由に、
山全体を外から見て、「目」の位置と思われる8~7合目にある
「酸醤」が赤く見えなければ行けませんが、
ほおずきの「草丈は60cmから80cm位」らしいので、
見る事が出来ないのではないか?と疑問が出る事です。
他にも、古事記には下記の文があります。
「彼の目は赤加賀智(かがち:ほおずき)の
如く身一つ而(に)八頭八尾有る」
この文から「赤加賀智」は「八頭八尾」の様な外見を有している物と
考えらますが、ほおずきとトマトの育て方等を比較してみると、
トマトの方が「八頭八尾」に似ているのではないかと考えています。
何にしても、「赤加賀智」の該当条件は、
「赤い」、「酸醤」、「八頭八尾」の三つを有している事になります。
そもそも、「赤加賀智」は食物なのか?という疑問は出て来ますが、
現時点では「ほおずき」と「トマト」しか思いつきませんでした。
☆連峰
古事記:
「亦 其の身に蘿(つた)及び桧(ひのき)榲(すぎ)が生えて
其の長い谿(たに)而(に)八峡谷に八尾度す」
日本書紀第八段本文:
「背の上而(に)於いて松柏(しょうはく)が生まれ
八つの丘と八つの谷之間於(お)蔓(つる)が延びる」
この二つの記事から、周りに「渓谷」や「丘」などが連なり、
「尾」の様に見えた事が推測出来ます。
連峰と解釈するのなら、目に当る「赤加賀智」は
手前の山よりも後ろにある山の可能性が出て来ます。
そうすると、近くで見るとある程度の大きさや長さがあるが、
遠くから見れば「目」の様に見る事が出来る物と言えるかもしれません。
また、連峰であれば「山地」を考える事が出来、
場所は「九州山地」と推測しています。
☆爛(ただ)れるとは?
古事記:
「其の腹を見れ者(ば:短語)悉く血が常に爛(ただ)れる也」
古事記では「高志之八俣遠呂智」の正体に関する記述の
最後で上記の文で締めくくっています。
「腹」とあるので、連峰の中腹や一つの山の中腹が考えられます。
では、「悉く血が常に爛(ただ)れる」は何を指すのだろうか?
「爛れる」を調べると「ただれる、くさる、やわらかくなってくずれる」
と記載されていて「やわらかくなってくずれる」の意だとすると、
「土砂崩れ」が発生して山肌が見える状態になったのではないかと
推測しています。
☆まとめ
考察したように、オロチとは
「遠くの里などから見て、目の様な赤い地域、渓谷の様な大きな地域
などから構成される風景」と考えた方が納得出来ます。
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