Under the Rose~秘密の花園~第40話 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります







白い手袋を嵌めた手を背中の腰のあたりで組み
遠い昔に起こった話を一気に物語ってくれたセバスチャンさんは
相変わらず窓の外に映る景色をジッと眺めた後
その瞼をそっと閉じると小さくため息を吐いたんだ




    「・・・・・、ふぅ・・・」




「・・・・・・・・・」




    「・・・・・・・・・・」



遠い昔に起こった悲しい話をここまで一気に思い出したせいで疲れたのか
セバスチャンさんはその後しばらく口を開こうとはしなかった・・


でもその話を聞いていたおいらは
話の続きが気になって仕方がなかったんだ




何故”カーミラさんの笑顔を見ることになったのが最後”になったのか・・・


その後2人の間に一体何があったのか・・・






そしてその事とおいらと


どう関係があるのか・・







「・・・・・・・・・・・」




あの教会にいた時も、そして今も・・・

自分の事だというのに何も教えてもらっていなかったおいらにとっては
その話の先を想像する事すら出来なくて
間を閉じたまま立っているセバスチャンさんの言葉を
ただ待つしか方法がなかった





「あ・・あの・・・」



    「・・・・・・、はい・・・」



「一体・・・何があったんですか?」



    「・・・・・・・・・・」



「どうして・・最後になったんです?
 想い合っているなら・・どうして一緒にならなかったの?」



    「!!?」



!!?
「・・・・・・ぁ、ごめんなさい・・・・」





おいらはその質問を投げかけた時
セバスチャンさんの瞳がキラリと光ったように見えて怖くなった
でも・・一度出てしまった言葉を飲み込むことは出来ない


おいらは心の中で”しまった!”と後悔しながらも
でももう1つの心の端ではこれで結末が分かるかもしれない・・と
相反する2つの想いが入り混じっていたんだ・・・



するとセバスチャンさんはそんなおいらの心が読めるのか
「ふっ・・・」と小さく息を吐いた後
ベッドの上にいるおいらの方へと近づいてきたんだ・・




     「智様・・・」



「は・・はい」



     「貴方様の頸に掛かっているそのネックレス・・」



「え?あぁこれ?これは・・」



    「はい、それは教会が花嫁候補の人間に渡している証・・・」



「・・・・・・・・・・・」



    「でも、本当はそのネックレスは元々カーミラ様のモノだったのです」



!!?
「えっ!!?どうして・・・?」




   「あの頃・・自分達の領土を広めようとしている国の軍が
    自分達の行く手を遮っている我々の森近くまで辿り着きました・・
    王は更に領地を広めるために大金を賭け
    その地域に詳しい人間を城へと呼び集めたのですが
    その中に何と”あの時”逃げた猟師がいたのです」



「!!?













   「猟師は情報料として国が提示した大金に目が眩み
    以前自分が行った話を自慢げに話して聞かせました
    この近くの村には”魔女”がいた事、
    どんな傷も治してしまう”泉”がある事
    そして・・その魔女を散々痛めつけた後
    この森の中に”捨てた”事など
    悪びれもせず何もかも全て話して聞かせたのです」




「・・・・・、まさ・・か・・・」



   「この森はもう何百年も前から我々バンパイアの手で守り続けられてきました
    当然森の周りに暮らしている村人たちは少なからずこの森の恩恵を受けています
    そんな村の中には我々を敬い崇めている人たちも存在しました」



「・・・・・・・・・・」

   
   「その話を聞いた王は当初は我々と手を組もうと申し出てきたのです
    無駄な争い事は避け、このまま共存しようと向こうから申し出てきた・・」




   「なのに・・・」



    「王はある日突然、我々の森を焼いたのです・・」




!!!?
「どうして!!?」



   
    「残念ながら、今となってはもう本当の理由は分かりません
     でもその理由の1つは・・分かっています」


「なに?」


    「それは・・・翔様と一緒に笑っているカーミラ様を見た王が
     その美しさに心を奪われ欲してしまったからです」




!!!?
「そんな!?だってカーミラさんは・・」



    「はい、その頃お2人は既に想いあっておりました」
    


「それ・・で・・?」




    「でもどうしても諦め切れなかった王は
     ”大切な話があるから”と翔様を自分の城へと態と呼び寄せたすきに
     進攻していた大軍で我々が住んでいた城を攻撃させ
     今まで何百年もこの土地を守り続けてきた森に火を放ちました
     そしてその混乱に乗じてカーミラ様を奪って行ったのです・・」



「そんな・・・」


     
    「”森を焼く”と言う事は我々を敵に回すと言う事・・
     そしてその作戦を考えたのは・・あの猟師だったのです」




!!!?





そう言葉にした時のセバスチャンさんは
いつもの穏やかな表情とは全く違う顔をしていた・・

唇を強く噛み締め
悔しそうに眉を寄せながらそう話す彼の表情には
翔さんにとっても自分自身にとっても
とても大切でかけがえのモノを
2つとも失なってしまったという悲しみの色が見える



当然翔さんにとっても


愛しい”女性”と、大切な”森”は・・


そのどちらもとても大切なものだったに違いないのに・・






「信じられない・・どうしてそんなことが出来るの?」



    「・・・・・・・・・・・」



「酷過ぎるじゃない・・・」



    「そうですね、本当にそう思います
     もしあの時の王の心の中に
     今の智様の様な優しい気持ちが少しでも残っていれば
     あのような惨劇は起こらなかったでしょう・・」



「あ・・もしかして・・・ 
 翔さんが僅か3日で1つの国を滅ぼしたって言う・・あの?」



    「そうです・・王はどんな手を使っても決して折れず
     ”決して貴方のモノにはならない”と言い切ったカーミラ様を
     自分を誘惑した”魔女だ”と言い出し火あぶりの刑にした・・
     その事を知った翔様は・・怒りで我を失ってしまわれたのです
     暴走した翔様の能力は途轍もない威力を発しました
     その時の翔様はずっとお側で仕えてきた私でさえ恐ろしくて
     雅紀様、和也様、潤様の力をもってしても止めることは出来ませんでした」


「・・・・・・・」

     
    「そしてあっという間に大きな国を滅ぼしてしまったのです・・」



「翔さん・・・」



    
    「大切なものを同時に2つも失ってしまい
     深い悲しみの中に沈んでしまった翔様は
     その後しばらくしてからその土地を離れました・・
     カーミラ様が亡くなった後に生えた
     1輪の薔薇を大切にその手の中に携えたままで・・」



     
「・・・・・・・・」




おいらはその時の翔さんの事を考えると
ズキズキと胸が痛くて・・・苦しくて・・・・
もしかしたらこのまま息が出来なくなってしまうんじゃないか?と
思ったくらい本当に苦しかったんだ・・・






ポロ・・・





そんな時おいらの頬を何かが滑り落ちてゆく

そしてセバスチャンさんの話を聞いていた間中
ギュっとシーツを握り締めていたおいらの手の甲に落ちると
小さな楕円形の粒となり、やがてシーツの中へと消え落ちて行った・・