あ、BなLな要素はもちろん、恋愛要素は全くありません。かけらもないです。あしからずです。
中(なか)つ国と呼ばれし古(いにしえ)の昔より、この国には八百万の神々が住まう。
森羅万象、すべてのものに神が宿る。
そしてまた、100年以上の長きにわたり大切に扱われし「もの」にも付喪神と呼ばれる精霊が宿る。
昼とも夜ともわからぬ、右も左も天も地もわからぬような闇。
その中に「気」らしきものが集まり小さな光を放ちながら「チ」が生まれようとしている。
「チ」すなわち「霊魂」
厳かな気。粛々たるエネルギー。
民家の古い蔵の中の奥の奥にしまい込まれた長持の中。
その刀剣を依り代として、「チ」はその刀剣の精霊として今、この世に生まれ出づる。
まだ形を成さぬ混沌とした小さな光。
ただの光の塊でしかなかった「チ」が渦を巻きながら徐々に大きくふくらみはじめ、やがて精霊としての姿をおぼろげに形作ってゆく。
精霊の姿形はその精霊が宿る「もの」の思いの形。在りたい姿。
光の渦に漆黒の長き髪をなびかせながら、裸でうずくまる若き美丈夫の姿がぼんやりと闇に浮かび上がる。
わが身の形があってないような、意識があるようでないような。
まだなにもかもがはっきりとした秩序を持たぬ中、今、正に生まれようとしているその付喪神の内界に不鮮明に現れる一人の男の後ろ姿…。
己が精霊として生まれ出づるとともに思い出される、刀という「もの」でしかなかったときのうっすらとした記憶…。
(あれは…あの背中は…)
その男に大事そうに見つめられ、丁寧に刀身の手入れをされるときに感じた誇らしさ…。
かの人と共に在りたい。
かの人の傍に侍(はべ)りて共に戦うために、かの人の力になるために。
そしてかの人を失うくらいなら…俺がかの人の身代わりになれるものなら、喜んで身代わりになろう。
この身が破壊されてもかまわない。それでかの人を守れるのならば。
そんな思い。いや、願いとでもいうべきか…。
(あれは…あれは誰だ…)
…嫌だ。俺を離せ。
俺を連れて行かないでくれ。
俺をかの人から引き離さないでくれ…。
生まれたばかりの付喪神の、だんだんと覚醒する心に徐々に思い出される絶望感。
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古くは霊や魂を「チ」と呼んだそうです。
「いかづち」「オロチ」「ミヅチ」などの「チ」もその意味があるのだとか。
そして刀が「タチ」と呼ばれるその「チ」にも「霊」という意味があるとかないとか…。
ということで、兼さんが付喪神として生まれたところを書いてみた。
そして、審神者にこの世に降ろされるまで、彼はもう少し眠ります。
ひと眠りが200年とかそんなレベルですが(笑)
難しい題材に思い切って足を踏み入れるので、ちょっと時間かかりそうです。
ぼちぼちと頑張りたいと思います。
ホントは全部書いてから分割してUPしていくべきなんだと思うんだけど。
思っているんだけど出来ない。
てか、全部書けてから…なんて思うと、いつになるやらわからない気もする。
私、根性ないからなぁ…。