(続)光が射す場所 100 | 蒼のエルフの庭

蒼のエルフの庭

蒼の方への愛を叫んでおります
主に腐小説中心の妄想部屋でございます
ご理解いただける方のみお入りください
(男性の方のご入室はお断りいたします)

若主人に連れられて店先に出ると

和也が帳簿片手に

運び込まれた野菜を振り分けるように

奉公人に指示を出していた

 

「あれは何をしてるの?」

 

「家は問屋だよ

 近隣の農家から仕入れた青物を

 得意先に届けるのが主な仕事だ

 今はその振り分けをしてる所だな」

 

「ここでは売らないって事?」

 

「八百屋じゃねえからな(笑)」

 

「だから並べきれないほどの野菜が ・・・」

 

「俺は何を手伝えばいい?」

 

「今日は見学だな

 いきなりは無理だ

 和也に仕事の邪魔だと睨まれる

 こっちに来て座りな」

 

大野を帳場の所に連れて行き座らせる

二人を ・・・ と言うか若主人を見た和也が

手代に帳簿を渡して慌てて飛んでくる

 

「兄さん、おはようございます

 どうかしましたか?」

 

こんな早くに戻って来るとは思っていないから

驚いた顔をして若主人の前に座る

 

「大野殿が店の手伝いをしたいというから

 ここで見て貰おうと思ってな」

 

「はあ ・・・ 手伝いを?」

 

出来る事と言えば

荷を下ろすか

荷を届けに行くかのどちらか

どちらも力仕事

このお方に出来るのか?

いっそう怪訝な顔をする

 

「まあ、そんな顔をするんじゃないよ

 私がもう一人増えたと思えばいいだろう」

 

「兄さん ・・・ 大野殿は大事な客人

 そのお方に力仕事をして頂くのは

 失礼に当たります」

 

「大野殿からの申し入れなんだよ」

 

「左様でございますか ・・・

 それでしたら

 上毛屋に運ぶ荷を

 お願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「ああ、それならすぐに出来るな

 私と大野殿で運ぶことにするから

 荷台に積んでおくれ」

 

「握り飯の用意が出来たら

 荷を運んで

 そのまま出掛けるよ」

 

「どちらに?」

 

「両国の見世物小屋に行ってくる」

 

両国の見世物小屋

それを聞いただけで

絵の準備なのだとピンとくる和也

 

満面の笑みを浮かべる

 

「お二方ともゆっくりして来て下さい

 それで、夕餉はどちらで?」

 

「そうだなぁ ・・・

 店の者と顔を合わしていないから

 今日はこっちで食べるよ

 いいかい?」

 

「みんな喜びますよ

 兄さんがいないと

 火の消えたみたいに静かになる

 日に一度は顔を見せてやってください」

 

若主人が店に入るなり

若智屋で働く人たちの顏が

パッと明るくなったように見えた

あれは大野の気のせいではなく

みんなが喜んでいたからだ

若智屋の奉公人は江戸一の果報者

翔旦那の言葉を思い出した

 

「話を聞いてやらねえとな(笑)」

 

「お願いしますね

 では、私は仕事に戻ります」

 

「そうしておくれ

 私たちは出掛ける支度をするから

 荷が積み終わったら

 声を掛けておくれ」

 

「承知しました」

 

一連の二人の会話を聞きながら

若智屋がこの通りに店を構えられるようになったのは

細やかな気遣いが出来る

若主人有っての事だと

改めて気付かされた

 

「若ちゃんは ・・・ 凄いね」

 

大野が感心したように呟く

 

「何が凄いんだい?」

 

「青物問屋の主なんだなって」

 

「名前だけだよ

 和也が、奉公人がさせてくれるからな

 それがなければ

 とっくの昔に潰してるよ」

 

「それはないと思う ・・・」

 

「兄さん、早く奥に引っ込んでください

 この忙しい時間に

 店先で油を売られたら

 堪ったもんじゃない ・・・

 さっさと ・・・行ってください」

 

どうやら通りから

得意先の旦那らしき人が

チラチラと中を覗き込んでる

 

「あの人は話しだすと長いですから」

 

追い立てる様に

奥に行けという仕草をした

 

「大野殿、私の部屋に

 暇な時なら良いが

 今、捉まっちまったら

 両国にも行けねえ(笑)」

 

大野の背を軽く叩いて

立ち上がるように促し

そのまま奥に向かう

 

 

 

 

 

<続きます>

 

 

こんにちは

まさかの100話です

100話に相応しい話かと言われると

全く持って、いつも通り

まったり進んでおります

(申し訳ない)

このお話、そこまで長くなる予定では ・・・

余りにも遅筆で呆れますが

気長にお付き合いください

 

 

蒼のエルフ