歪んだ街4 | blondcoco の人生相談

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朱夏世代(30代、40代)の うつや思春期特有の悩みが 得意分野です。


「お久しぶりです。シマフクさん!」

と、瀬戸内海を思わせるパーマネントブルーのワンピースを着た女性が、微笑みながら言う。

「失礼ですが、ぼくと以前どこかでお会いしたことがありましたか?」

シマフクは、この女性に心あたりがない。

「あれから、もう18年になりますから、きっと覚えてはいらっしゃらないでしょうけれど、私はずっと忘れずにいます。

忘れようとしても、忘れられないわ!」

女性が、涙声になっている。「全然、お変わりになってませんのね!?」


もしかして!?シマフクの脳裏にひらめくものがあった(さっき、俳優のヌクミズさんに似た年配の男を見たからだろうか?)。

「もしかしたら、18年前に歪んだ街のマンホールの近くでお会いした母子(おやこ)の、その娘さんだった人ですか?」

〈もう、こんなに大きくなられたんですね!〉と、続けて言おうとしていたシマフクを、女性の声がさえぎった。

「私、あの時の母親の方ですわ!」と言って、クスッと笑う。


シマフクは混乱している。

ひとまず落ち着こうと思い、レジ脇に椅子を持ってきて、そこに女性を座らせると、自分は珈琲を入れるために奥に入ってゆく。

珈琲をカップに注ぎながら、彼は少しでも落ち着こうとしている。


シマフクは、18年前のあの日、歪んだ街で起こったことを、順を追って記憶の底から呼び戻そうと試みているようだった。

「あの時、ぼくはあの母子にマンホールから上がったところで出逢って、女の子が興味津々に真っ暗なマンホールの中を覗きこんでいたので

〈その下へは、降りない方がいいよ!〉と言った」


「そうなの。せっかくあなたがそう言って下さったのに、あの娘ったら、中に入って降りて行ってしまったのよ!」

いつの間にか、シマフクはその母親の女性と向き合ってレジ脇に座り、珈琲をすすっていた。

おかしいな!?シマフクの魂は、まだ店の奥で珈琲を入れているはずだったのだが、彼の身体(からだ)はすでにこうして女性と向き合って対話しているのだった。


「あれからぼくは、駅へ戻ろうとして(こんな気味の悪い歪んだ街からは、一刻も早く抜け出したかったから)、実際戻って行った。

途中で確か、救急車が消防車を引き連れて、けたたましいサイレンを鳴らしながらぼくの脇を、凄まじいスピードで走り過ぎて行ったことを覚えている。

こんな凸凹な路面の街だから、当然交通事故も多そうだったし、その時は別段気にも止めていなかったけれど-----」


「あの時は、私が救急車を呼んだのよ!

あの歪んだ街には、文字はもちろん数字も存在していなかったから、テレパシーを使ってね!!」