嗚呼、あけちゃん 8 | blondcoco の人生相談

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朱夏世代(30代、40代)の うつや思春期特有の悩みが 得意分野です。


冬の日。北風が強く吹く午後。

あけちゃんが、久しぶりにひなびた町のさびれた駅に降り立った。

あけちゃんが故郷のこの町へ帰ってきたのは、二年ぶりのことだった(ブログにも2年ぶりの登場です)。

駅前の商店街は二年前よりも、もっとさびれていた。

駅で一緒に降りた年配の女性たちが、この町のスーパーが閉店したという話をしていた。

駅とパラレルに走っている商店街には、人間どころか、犬一匹すらも歩いていない。

まるでゴーストタウンのようだ。

黒澤映画「用心棒」の現代版セットか、昔の西部劇でクリント・イーストウッドが歩いていそうな町に見えなくもない、と思わず苦笑する。

それでも気を取り直して、あけちゃんは高校時代にアルバイトしてお世話になったひなびた町の雑貨屋さんへと、寒風の中コートの襟を立てて向かう。

店長さんは、どうしているだろうな?と思った。

かつてあれほど繁盛していた、ひなびた町の雑貨屋さんだもの。

通りには人っ子一人いなくても、お店の中には少なくとも数人は来店しているのだろうと思いたかった(少なくとも数年前まではそうだった)。


お店の近くまで来て、あけちゃんは思わず足を止めた。

お店の看板を兼ねたテントが、ボロボロになって風に揺れている。

それでもウインドウ越しに外から見ると、お店の中は以前と同じように、照明は明るく灯されていた。

お店の中に入ると、やはり以前のようにボリュームを上げた J-POPの有線音楽が流れている。

(中森明菜が、ハスキーな低音ボイスで誰かのカバー曲を歌っていた)


店長が一人でレジの所に座って、何か書き物をしているようだった。

「こんにちはあ!お久しぶりです」あけちゃんが元気に挨拶をする。

店長は、声の主があけちゃんだと判ると、その刹那相好を崩して、顔中にいっぱいの笑顔を浮かべる。

「お店どうですか?その後」 あけちゃんは単刀直入に尋ねてみる。

「それが、ごらんの通りさっぱりだ。お客さんがほとんど来なくなった。消えてしまったみたいだ」と、店長が苦笑しながら云う。

「今ね、お客さんに来てもらうための仕組み作りを考えていたところなんだけどね」


「仕組み作り?ですか」あけちゃんは少し表情を曇らせている。

店長はきっと、これほどまでに状況が悪化するなんてことは、まったく考えてはいなかったのだろう。

昔の繁盛ぶりからは、誰しもおそらく想像できないのかもしれない。


「そう、仕組み作りなんだ。仕組みとはね、商品を売るための仕組みではなくて、お客さんにどうやったら感動を与えられるか?という仕組みなんだけどね。

物(商品)にフォーカスするのではなく、人にフォーカスしなければ、仕組みっていうのは上手くいかないんだ。

物(商品)にフォーカスすると、どうしても儲けようという発想になってしまう。

儲けようと企めば、人は離れていってしまう。

そうじゃなくて、人を悦ばせてあげられれば、その人は又来てくれて、結局は物(商品)を買ってくれるという訳だからね」

それをね、一人でずっと毎日のように考えているんだけど、なかなか良い知恵が受かんではこないんだ」と、店長が淋しそうに笑う。


「それなら、このブログを読んでくれている人に尋ねてみたらいいんじゃないですか?何かしらヒントなり、気付きが得られるかもしれませんよ」と、あけちゃんが提案した。

「ネット通販に押されて、全国の雑貨店が悲惨な状況に墜ち入っています。

昨今は、東日本の大きな雑貨チェーン店ですら、民事再生の手続きに入っているようですし、ましてや地方の路面の雑貨店は、どうやって生きのびてゆけばよいのでしょう?

私からもお願いです。このブログを読んでくれた方で、何か良いアイディアなり考えをお持ちの方は、コメント欄からでも、どうか店長に声をかけてあげて下さい」


「嗚呼、あけちゃん。ありがとうね」店長は涙💧ぐむ。


「たしかに今は、僕がお店の経営に携わって47年の中で最悪の状況で、ご奉仕高(売上)は全盛期の1/20しかないし、仕入れ資金も枯渇していてとても苦しい」

そう云ったあと、店長は一瞬言葉を呑み込む。

ボロボロになっているテントを張替えることもできないとは、さすがに云えなかったようだ。

「それでも、僕はごらんの通り元気だよ。

この苦しい状況下で、今自分に出来ることは何だろう?って、毎日考えている。

そういうことは、実は愉しい。

僕は元来、考えるということが好きだからね。

それより、あけちゃんはあけちゃんで、都会で自分の人生をもっともっと謳歌してほしいな。

僕は生涯、この仕事に取りくんでゆくよ。

どんなに売れなくても、この雑貨屋の仕事が好きなんだ。

どの道、僕が死ねば、僕の世界は閉じる。

このお店と同時にね」