昨日、浜松町にある文化放送12階にあるイベントホールで「Kesennuma Smiles~気仙沼に笑顔を、気仙沼から笑顔を」というイベントが開催された。
気仙沼最大の水産加工業者である「阿部長商店」主催によるイベントで、堤幸彦さんが演出し、TBSのCSチャンネルで震災1周年の3月11日に放送された気仙沼が舞台のドキュメンタリー映画の上映とその作品の主題歌を歌った熊谷育美さんによるミニコンサートのコラボです。
たまたまこのイベントの運営を当社が受託した縁で立ち会ったわけですが、堤幸彦監督、その映画に主演した生島兄弟、その映画の主題歌を歌った熊谷育美さん、そして気仙沼を代表する企業阿部長商店様の協力があってこそ実現したイベントです。
小さな会場でしたが、気仙沼からバスツアーで訪れた人を含め、この日会場を訪れた人たち全ての心に何かを刻んだイベントだったような気がします。
心に刻む何か・・・・・・・・・そういう意味では映画「アーティスト」ほど今という時代に生きる人の心に分かりやすく愛を刻んだ作品は近年ないと思います。
思いもかけないのか、順当なのか分かりませんが、アカデミー賞を受賞した後の公開というタイミングに加え、モノクロサイレント映画という話題が映画ファンを惹きつけました。
ところが公開してみると、興行面で苦戦。
これを数字で見るとオープニング2日間で動員4万2277人、興行収入5319萬3300円。
これは同じGAGAが3月に公開した「マーガレット・サッチャー」対比43%という物足りなさです。
それが証拠に初登場7位のあと9位に後退しています。
私が観た銀座のシネスイチッチ銀座も空席が多く目立ちました。
話題性があり、この作品を観た多くの人が「感動した!最高だった!」と伝えるのにどうしてヒットしていないのか?
ちょっと不思議な気がします。
銀座のシネスイッチや渋谷のシネマライズで上映されているところを見ると、この作品を買い付けた配給会社のGAGAは作品の性格から、当初単館向け興行作品と判断したのだと思います。
それが一転アカデミー賞候補になったことから、TOHOシネマズやワーナーマイカルシネマなど大手チェーンで拡大上映した結果、1館当たりの観客アベレージが低下。
シネコンの多くがスーパーやショッピングモールなどに入っているので、そもそも「アーティスト」という作品を観たがる観客とは層が違うのだと思います。
クチコミが拡大した後に上映館を増やすという戦略はとれなかったのでしょうか。
・・・・・・・・・・・・アカデミー賞作品賞を受賞したわけですから、難しい選択ですよね。
もう一つは、作品内容です。
音も色もない純愛映画では3D映画を観慣れた今の若い人たちを惹きつけることができなかったのかもしれません。
俳優の繊細な表情や仕草だけで観客に訴えるサイレント映画ならではの魅力は沢山あるのですが、その魅力をアカデミー賞作品賞というコピーだけで伝えるのが難しかったのでしょう。
配給元のGAGAも焦ったのか、当初の戦略どおりなのか分かりませんが、21日(土)日本経済新聞朝刊にカラー全15段の広告を打ちました。
コピーは、
「2011年英国王のスピーチに続き、2012年アカデミー賞作品賞受賞、今年最高の名画!!」
です。
映画に深い理解を持ち、お金も教養もある「大人」に絞った戦略なのだと思いますが、この層の人たちの心に突き刺さるためには「アカデミー賞受賞作品」というだけではちょっと物足りないような気がします。
人生の涙も、人生の愛も経験したキャリア充分の大人有名人の感想コピーがあっても良かったかもしれません。
しかし、大ヒットしなくたってこの作品の価値が下がるわけではありません。
サイレント映画の帝王ダグラス・フェアバンクスを想起させるジョージ・ヴァレンティンを演じたジャン・デュジャルダンの演技もジョージの愛犬を演じたアギーの演技も良かった。
そして何よりも素晴らしいのはモノクロサイレント映画に突如色と音がつくラストシーンではないでしょうか。
この仕掛けには驚きました
これは見てのお楽しみです!
私にとって作品内容と興行形態の選択がいかに難しいかを考えさせられる作品でした。