シニアだって使っているSNS
学生時代の後輩Tクンが私が勤務する会社を訪ねてきた。
久しぶりの再会だ。
Tクンは音楽評論家として名高いT澤さんの事務所で働いている。
T澤さんは著名な音楽評論家であるだけでなく「エイジミュージック・フリー」 というシニア向けの音楽キャンペーンをレコード会社と共同で推進していることでも有名だ。
TクンはT澤さんが保有しているフォークやニューミュージックに関する膨大な資料をアーカイブ化し、それをシニアの音楽ファンに開放しようとの試みを現実のものにするため、私のところに相談にやってきた。
今は「T澤資料館」として、ごくごく一部の人に開放しているだけだ。
私が見ても貴重な資料だと思うし、多くの人に見てもらいたいとも思う。
こういいう相談の場合、多くの人が自分で何とかしようと考え、そのための費用をスポンサードしてくれる企業探しのために広告代理店を訪ねてくるか、保有しているコンテンツを有料化したいという相談で訪ねて来ることが多い。
でも私の答えはいつも同じです。
まず、無料で開放しましょう。
そして、ターゲットが既に存在しているシニア向けの交流サイトに企画として持ち込みましょう。
お金になるのはその後です。
通常はここまでで話が終わってしまうことが多いのですが、今回は検討してくれるようです。
そんなこともありシニア向けと言われる交流サイトのことを調べてみた。
SNSを利用している世代別の利用率が載った資料が見つかった。
昨年12月の調査資料だ。
SNSの利用率は全体で60.8%。
つまりインターネットを利用している人の60.8%が何らかのSNSを利用したことがあると回答している。
40代と50代を合わせた利用率を見て驚いた。
48.7%、意外と高い。
会員9万人が参加しているシニア向けSNSの「Slownet」では50代が34.7%、40代が23.6%、60代が14.3%となっている。
この数字を見ると、「シニア=リタイアした人」と思いがちだが、そうではなく「シニア=リタイアに備えている人」という表現が当たっているのかもしれない。
シニアはどういうSNSを好むのだろうか?
会員数40万人を超えるシニア向け交流サイト「趣味人倶楽部」(シュミートクラブ) でその実態を見てみる。
「趣味人倶楽部」の冒頭にはこう書かれている。
「趣味を通じていろいろな人と交流したい、仲のよい友人とネットで連絡を取り合いたい、旅行ツアーで撮影した写真を同じツアーの参加者と交換したい」
そういう人のために「趣味人倶楽部」はあるのだと。
そしてキーポイントは以下の3点です。
1.コミュニティに自由に参加できる
2.コミュニティを自由に作成できる
3.イベント、オフ会に参加できる
特にシニアの場合、No.3は肝です。
若い人と異なりインターネットなどない時代を生き抜いてきたシニアですから、リアルの場は絶対に必要なのです。
「趣味人倶楽部」の上手さはそれだけではありません。
昨年登場した「創作広場」です。
「創作広場」とは、
「自分で書いた小説、詩、俳句、川柳、短歌などの作品を自由に公開できる広場」のことです。
シニアの人たちには創作意欲旺盛な人が多いので、それを発表する場は大歓迎なのです。
この創作広場の上手さは、これだけではありません。
広場の注目を集めるため、既存の直木賞作家に書き下ろしや新作の一部をここで公開させるのです。
例えば、現在は篠田節子さんが「7時間9分」という26ページのオリジナル作品を創作広場で公開しています。
過去には北村薫さんや山本一力さん等が自作品を広場で公開しています。
凄い企画です。
シニアだってSNSを使っている。
まさにそのとおりだと思う。
ただ、モバゲーやグリーなどのように2,000万人会員というわけにはいきません。
でも、これから間違いなく増えていく世代なのだから、前途は明るいと断言できます。