私の宝物
貴乃花が大方の予想を裏切って相撲協会の理事に当選した。
朝青龍問題の追い風があったかもしれないが、一門という派閥を維持することしか頭にない守旧派の親方たちの中にも改革派がいたということだ。
一門の恥だと叫びながら、立浪一門は犯人探しにやっきになっているが、これも醜態以外の何物でもない。
相撲協会の親方たちは何も分っていない。
世間の常識とはかけ離れているなあ、と思った人は多いだろう。
それにしても貴乃花の相撲道改革に賭ける「思い」、それも「強い思い」が大きな山を動かしたことは間違いない。
話は変わるが、私には大切に保管しているサイン色紙が2枚ある。
私の宝物です。
1枚は子供の頃、近くの多摩川べりにあった読売巨人軍の2軍練習場で初めてもらったサイン色紙。
その色紙には「背番号28、塩原明」と書かれている。
松商学園から巨人に入団した内野手で、活動期間は僅かに8年。456試合に出場して852打数179安打。本塁打は僅かに10本という記録が残っている。
普通の選手だ。
地味な選手だったが、生まれて初めてもらったプロ野球選手のサインだけに今も大切に保管している。
もう1枚のサイン色紙はフォークシンガーの「さだまさし」にもらったものだ。
そこに書かれている言葉に強い感銘を受けたから、大切に保管している。
そこには「強い夢は叶う」と書かれている。
「夢が叶う」=「Dreams come true」だが、夢や思いを叶えるためにはただの夢や思いではダメであり、強い夢でなければならないということだ。
貴乃花親方の理事選への出馬表明は、まさに相撲道改革に賭ける「強い思い」だったのだ。
一昨日、統合前の会社から苦楽を共にしてきた後輩のNくんと久しぶりに二人で酒を飲んだ。
統合前に私とNくんが所属していたBという広告会社は創立以来、音楽業界をメイン顧客として成長してきた。
広告業界で大手と言われるD社やH社には絶対に負けたくない、という自負を持って仕事をしてきた。
その原動力は、「このアーティストを売りたい!」、「この音楽が好きだ!」、「この会社が好きだ!」という強い思いだったと思う。
創立間もないエイベックスが我々の会社をパートナーに選んでくれたのも、担当営業マンだったN君の「強い思い」に共感を覚えてくれたからだろう。
TRFも浜崎あゆみも小室哲也も安室奈美恵もEXILEも・・・・・・・・・・みんなデビューの時から付き合ってきた。
当時の社員は公私の区別なく、真夜中も休日も、寸暇を惜しんでレコード会社のスタッフやアーティストと付き合い、朝まで酒も飲めば、一緒に旅にも出るし・・・・・・・・・家族には苦労をかけたなあ・・・・・・・・・・・・・・などと思いながら酒のピッチが上がった。
並みのサラリーマン感覚では勤まらないだろう。
でも我々にとっては当たり前のことだった。
そして多くの仲間がレコード会社や音楽プロダクションへと巣立って行った。
この仲間の輪が、次の財産につながっていく。
D社やH社が簡単にできるわけがない。
しかし会社が統合して大きくなり、社員が増えてくると、我々が持ち続けてきた「強い思い」が徐々に希薄になってきたような気がする。
「強い思い」のない社員と一緒に仕事をしているうちに「強い思い」を持っていたはずの社員が「普通のサラリーマン化」してきているのだ。
そんなタイミングでの広告不況。
危険な兆候が出始めている。
N君と、酒を飲みながらしみじみと語り合った。
「単に大きいことは良いことではない」
一人一人が「強い夢」や「強い思いを」持ちながら仕事ができる集団に変えていかなければならない。
残された時間が少ないと思う今日この頃だ。