映画「沈まぬ太陽」を見ました | ソフィアの森の「人生は、エンタテインメントだ!」

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音楽が好きで、映画が好きで始めたブログですが、広告会社退職後「ビジネスの教訓は、すべて音楽業界に学んだ」を掲載しました。

長い・・・・・確かに長かったけれど・・・・・・・・


12月25日。


28日も出社しますが、25日が実質の仕事納めでした。


今年の仕事納めをどうするか?


考えた末に決めたのが、公開以来「観たい!観たい!」と思っていながら連日の会食・宴席で3時間20分という時間がとれなかった「沈まぬ太陽」を観ることでした。


劇場は日比谷のみゆき座です。


私と同じような考えの人が15名。劇場は空いていました。


確かに長い・・・・・・・・・・けれど、長さは感じませんでした。


以前、ケネス・ブラナー監督の「ハムレット」も3時間を超える大作で途中休憩付でしたが、この時は長く感じました。


字幕を読むか読まないかの違いもあるのでしょう。


ソフィアの森の映画と音楽&広告、マーケティング


映画はいきなり1985年8月、御巣鷹山の国民航空機墜落事故から始まります。


この事故の描写がすごい。


事実を知っているだけに胸を打たれます。前半はこの事故で遺族の世話に奔走する主人公の描写から始まります。


この事故を物語の軸とし、東大法学部を卒業後、国民航空に就職。労働組合の委員長として国民航空初のストライキを決行し、会社から「赤」のレッテルを貼られた恩地元の悲惨なサラリーマン人生(いわゆるイジメです)が描かれます。


国民航空が日本航空のことであり、恩地元が実在の小泉寛太郎氏であることは既成の事実です。


やはり、この映画を観たら日本航空の体たらくが、この頃から始まっていたのだと、強く感じる人は多いでしょう。


日航の社員にとってはたまらない映画です。


怒るのも無理はありません。


しかし、この事故を教訓としていながら、日航の体質はその後20年以上、何も変わらなかったということです。


恩地元について言えば、現実では事故にあった遺族の世話をしたことはなかったそうですから、この部分はフィクションです。


でもカラチ、テヘラン、ナイロビ等の僻地に10年近くにわたって飛ばされ、悲惨なサラリーマン人生をおくったことは事実です。


これだけイジメられてよく会社を辞めなかったものだと感心してしまいます。


家族も辛かったでしょう。


「このままでは俺の矜持(きょうじ)が許さない」


映画の中での有名な台詞です。


矜持・・・・・・・今どき使わない言葉ですが、麻生前首相が定額給付金を交付したときに「国民の矜持・・・・」という使い方をしていましたね。


要は「自負」とか「プライド」という意味です。


恩地元は、この「矜持」を守るために悲惨な差別にあっても国民航空を辞めなかったのです。


この生き方が青臭いのか、若いのかは、元組合の副委員長として恩地を支えたにも関わらず、その後転向して常務にまで昇りつめた行天(三浦友和)の生き方と対比するとよく分ります。


渡辺兼も良かったけれど、行天役の三浦友和が良かった。


助演男優賞に相応しい演技だと思いました。


ただ、登場人物が多く、この長編を3時間強に収めること自体に無理があるので、ドラマとしての掘り下げは浅いです。


矜持と言えば、私自身にも似たような経験があります。


レコード会社勤務時代のことです。


当時邦楽宣伝(ロック系)の責任者でしたが、資本の論理で親会社のM電器から天下りしてきたK社長と激しく対立。


K社長は音楽の心やそれを創るディレクターの心情など全く理解できない人でしたから、まるでモノを創るような管理システムを導入して経営改革を行ったのです。


音楽が冷蔵庫や掃除機などと同じモノである。


これほど音楽を馬鹿にした話はありません。


同期や先輩など心ある人は先に会社を辞め、私一人とり残されてしまいました。


孤軍奮闘とまではいいませんが、何とか会社を良くしたいと思い、この社長と戦いましたが、いくつかの不幸な出来事が重なったり、上司の裏切りにあったりして激しく疲弊。会社を辞めることを決断しました。


入社して19年10ケ月目のことでした。


大好きな会社でしたから、断腸の思いでの決断でした。


もちろん次の就職先も決まっていませんでした。


あと2ケ月我慢すれば20年勤続で満額の退職金がもらえる。


「我慢しろ。大人になれ。」・・・・・・・・・・・・当時の人事部長が私に言った言葉は今でも忘れません。


しかし、当時の私は「あと2ケ月」が我慢できなかったのです。


これも「私の矜持」です。


この時の「矜持」は間違いなく今の私の支えになっています。


人間、目先の損得だけにとらわれず、生涯に一度でよいから「自分の矜持」に従って生きることを経験した人と、「波に逆らわず、波に乗ることだけを考えて、流れに身を任せて生きてきた人」とは、何かが違うと信じています。(今はまだ分りませんが・・・・・・・)


映画について最後に一言。


御巣鷹山の事故の後、国民航空の再建に政府の後押しで乗り込んできた国見会長を正義感溢れる人物として石坂浩二が演じていましたが、現実は違います。


この国見会長は、現実では日本の名門企業Kボウの社長~会長~名誉会長~終身名誉会長という役職に固執し、名門Kボウを破綻させた張本人なのですから。


最後に「沈まぬ太陽」の公式サイト にアクセスするとベートーベンのピアノコンチェルト「悲愴」が流れてきます。


まさにこの映画に相応しいBGMです。