日経ビジネス「セブン&アイの破壊」を読んで | ソフィアの森の「人生は、エンタテインメントだ!」

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音楽が好きで、映画が好きで始めたブログですが、広告会社退職後「ビジネスの教訓は、すべて音楽業界に学んだ」を掲載しました。

鈴木敏文会長、最後の大仕事


日経ビジネス2月2日号、久々に読み応えのある特集でした。


このブログで私は何度も「過去の成功体験を捨てることこそ、改革への近道だ」と述べてきました。しかし、それがどれだけ難しいことかという現実に直面してきたのも事実です。


オバマ大統領は変化の意味を「We Can Change」という「私たちは・・・・・」というアメリカ国民自らの意志に置き換えて大統領選に勝利しました。


このことは、「Change」のためには、強力なリーダーシップが必要だということも併せて教えてくれました。


さて、セブン&アイです。


記事はこのような枕詞から始まります。


「セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が破壊を始めた。2009年2月期に最高益を見込むまでに成長する過程で、社内に澱のようにたまった成功体験や前例主義という過去の破壊。コンビニエンスストア業界に根強い、成長限界の破壊。そして、グループの英知結集の妨げとなるセクショナリズムの破壊。過去を捨てて、挑戦せよ!自己破壊の掛け声とともに、100年に1度の不況破壊に挑む


かなり刺激的なイントロです。


セブン&アイ・ホールディングスは先頃、そごう心斎橋本店や北海道の西武百貨店の売却や閉鎖を相次いで発表し、世間を驚かせました。


特にそごう心斎橋本店の売却は鈴木が常々主張する「聖域なき改革」を実践するものとして、小売業界を震撼させたのではないでしょうか。


鈴木の改革の矛先は、まずセブン&アイ・ホールディングスの原点ともいえる「イトーヨーカ堂」に向けられました。


2008年2月期のグループ総売上高は5兆7986億9500万円。本業の儲けをしめす営業利益の71%をコンビニエンス事業が稼ぎ、イトーヨーカ堂などのスーパー事業は僅か12%でしかありません。


鈴木はヨーカ堂創業の原点である衣料品でさえ捨て去る覚悟でいます。


この特集記事でも触れていましたが、私は昨年暮れに仕事場近くのイトーヨーカ堂大井町店で1本のカジュアルスラックスを買いました。というか、時間に余裕がなくここで買わざるを得なかったというのが本音です。


売り場を見て驚きました。


殆どのスラックスがツータックなんです。


ユニクロに行けばツータックのスラックスなんてありません。


足を長く細くみせるためにはノータックで、細くスッキリしたデザインでなければなりません。


メタボで悩む50代や60代のオジサンだって気持ちは同じです。


しかし、ヨーカ堂の売り場では・・・・・・・・・・・・・年配の女性店員が「ゆったりとして、はきやすいですよ」という10年前と同じ文句で客にスラックスを勧めているのです。


驚きました!


これは私の実体験です。


鈴木はこう嘆きます。


「自信がないから、大量に発注してサイズや色の種類を揃えることができない。ユニクロはできるのに」


このままの状況が続けば、ヨーカ堂の衣料品部門が落日を迎えることは明らかです。


だから、鈴木は前例や過去の成功体験を捨てよ!というのです。


う~ん、凄い人ですね、鈴木敏文という人は・・・・・・・


最後にインタビューに答えた鈴木の言葉を紹介します。肝に銘じたい言葉が散りばめられています。


「過去の体験から抜け切れていないというところに問題があるんです。要するに経験がある人間と言うのは、自分はよく分かっていると、これでいいんだと、過去にとらわれるんだよ。変わらなくちゃいけない、新しいものを作ればいいじゃないか、と言われたって、そんなに変われるものじゃない。毎日一生懸命やっていれば、なかなかね。我々でいえイトーヨーカ堂なんかその典型ですよ。(中略)生活のあらゆるものが変わった(中略)だから、過去を全部忘れて新しいものを打ち出していかなくちゃいかん。商品も販売も陳列も、全部変わっていかなくちゃいかん。消費が飽和の状態だと言いながら、人間の欲望は無限なんですよ。だからそこに新しいものを打ち出してやればいい」


今期、過去最高益をたたき出している企業トップの発言としては異例なものかもしれませんが、変革への強い信念を感じ、共鳴した特集記事でした。


そういえば昔勤めていた企業のH社長が「朝礼暮改」という言葉をよく使っていました。


当時、朝令暮改は良い意味で使われることはなかったのですが、このH社長は「朝言ったことが、夕方に変わって何が悪い。変化の激しいエンタテインメント業界ではそのくらいの臨機応変さとスピードが必要だ」と言い切ったのです。


20年以上も前の話です。


以下、どの本も変化の時代に貴重な示唆を与えてくれるものでした。お薦めです。

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