1978年のTHE MARCH IN SF WORLD
新人のころ、自分の記事が初めて載った朝の感激を「文章に羽が生え、読者のもとに飛んでいく気分」と書いた。
これは9月14日、朝日新聞の天声人語氏が書いた文章です。
物を作り、その作品を世に問う仕事をしたことのある人ならば、形こそ違え、天声人語氏と同じ経験があることと思います。
初心です。
私がレコード会社に就職し、初めてディレクターとしてスタジオに入り、自分の責任でレコーディングしたのが「THE MARCH IN SF WORLD」というアルバムでした。
1978年の7月に4日間かけ、杉並のスタジオでレコーディングしました。
「スターウォーズ」、「宇宙戦艦ヤマト」、「サンダーバード」、「サイボーグ009」、「UFO」など当時ヒットしていた曲を行進曲にアレンジしたものです。
その時に演奏してくれたのが、「六門会合奏団」という大森第六中学校吹奏楽部のOBが結成した吹奏楽団でした。
レコーディング予算が潤沢でなかったこともありますが、この社会人と大学生で構成された吹奏楽団に私の大学時代の友人E君が在籍していたことが大きな理由でした。
当時発売されたLPを何度目かの引越しの時に破損して以来、聴く術がなかったのですが、先輩の一人がCDに焼き直して過日、私のもとに送ってくれたのです。
今となっては赤面するくらい幼稚なアルバムですが(演奏は素晴らしいです!)、初めて世の中に出た私の作品です。
レコードが完成した時には、とにかく嬉しくて興奮し、発売日に何十軒かのレコード店に出向き、在庫を探す客のふりをして目立つ場所にディスプレイした記憶があります。
本日、その六門会合奏団の第42回定期演奏会を聴きに晴海の第一生命ホールに行きました。
42回のうち、10回以上は聴いているコンサートですが、演奏は円熟の域に達し、得意のマーチになると指揮者が必要ないほど快適なテンポで、聴衆も心からリラックスできます。
私が言うのもなんですが、かなり高い演奏レベルだと思います。
それにしても相当疲れたであろう、ラストのアンコールに何とも難しいリバーダンスの曲を演奏するなんて!
大したものです。(木管、特に大変そうでした!)
チョッピリ残念だったのは、ゲストのソプラノの方の声量が乏しかったことです。
「ウエストサイド物語」から名曲「One Hand、One Heart」を歌ってくれたのですが、残念ながらオリジナル曲が持つ感動は伝わりませんでした。
行進曲はブラスの演奏もさることながら、やはり打楽器群の力量に負う所が多いということも改めて感じました。
3連休の間に良い音楽を聴くことができたこと、六門会合奏団に感謝です!
初心忘るべからず。
「常に志した時の意気込みと謙虚さをもって事に当たらねばならない」(広辞苑)