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ロンドンを拠点とするロシアン・マフィアの裏側を描いたバイオレンス。
数々の映画賞で注目されたこの作品。重厚なストーリーと世界観に引き込まれます。
ロンドンで恐れられているロシアン・マフィア「法の泥棒(ヴォリ・ヴ・ザコネ)」の一員アジムの理髪店にやはり一員であるソイカがアジムの甥エクレムに殺されてしまいます。
同じ頃、街の薬局に裸足で助けを請う少女タチアナ。妊娠していたタチアナは出血して倒れてしまいます。
トラファルガー病院。
タチアナは亡くなってしまいますが、お腹の赤子は一命を取り留めます。助産師アンナは身元不明なタチアナの所持品から日記と名刺を見つけます。ロシア語で書かれた日記は翻訳を叔父のステパンに頼み、名刺を手にして、記されているレストラン「トランス・シベリアン」へ行くのですが・・・。
雨、霧をイメージさせるロンドンだからなのでしょうか。重い作品でしたねぇ。
主役は助産師アンナではなく、「法の泥棒(ヴォリ・ヴ・ザコネ)」のボスで「トランス・シベリアン」のオーナーでもあるセミオンの息子キリルの相棒ニコライでした。
どこか影のある男ニコライ。キリルの命令は絶対服従で運転手から死体の後始末まで眉一つ動かさず坦々とこなします。しかし、ニコライには大きな秘密と密かな野望を胸に秘めていました。
描かれていませんが、きっと、ニコライは初めの頃は演じていただけなのに、キリルやセミオンの近くまで這い上がる過程で、悪の心に染まってしまったのでしょうね。
でも、善の心も忘れていませんでした。アンナとの出会いによってニコライ自身がそれに気付かされているようでした。
ニコライ役のヴィゴ・モーテンセンが迫真の演技で魅せます。彼の映画と言っても過言ではないくらいの存在感を放っています。特に「法の泥棒(ヴォリ・ヴ・ザコネ)」の一員になるための儀式やサウナでの乱闘シーンなどは圧巻ですね。
サウナでの乱闘シーンは全裸であそこまで描いていいのかというくらいの死闘でした。ナイフで切られた肌に戦慄が走ります。
ニコライが気になる女性アンナは、相手がマフィアであることが判っていたのに、なぜあそこまで強気でいられたのかが少し説得力に欠けていたようにも感じましたが、流産の経験からあの赤子を我が子のように思っていたのかなぁ。
アンナ役にはナオミ・ワッツ。う~ん、ちょっと配役ミスだったような気が・・・。無名でもいいからロシア人女優のほうが良かったかなぁ。ちなみに、今回は一度も絶叫していません(^_^;
ニコライに無理な命令ばかりするキリル役にはヴァンサン・カッセル。「エリザベス」でもそうでしたが、彼はキリルのようなダメダメな男がよく似合いますね。
ニコライは完全にキリルを手玉に取っていましたね。セミオンもキリルよりニコライを信用しているようでしたし・・・。でも、キリルも自分がニコライより劣っていると判っていたから嫉妬し、無理な命令ばかり下しますが、その反面、憧れを抱き愛するようになっていたのでしょうね。
監督はデヴィッド・クローネンバーグ。ホラーのイメージが強い監督だったので、ちょっと意外でしたね。
ラスト。
警察も絡んだマフィアでの骨肉の争いのシーンかと思いきや、良い意味で、期待を裏切るラストシーンでしたね。あのラストから察するに、キリルとニコライがセミオンを殺してボスになったのかなぁ。
また、あの赤子は正規の手続きでアンナの子になったようには思えないのですが・・・。
目的を達成するために手段を選ばないのは、ニコライだけでなくアンナもそうだったということなのでしょうか。似た者同士の2人だったからこそ、お互いに意思疎通できたのかもしれませんね。
Title:
EASTERN PROMISES
Country:
UK/Canada/USA (2007)
Cast:
(Nikolai)VIGGO MORTENSEN
(Anna)NAOMI WATTS
(Kirill)VINCENT CASSEL
(Semyon)ARMIN MUELLER-STAHL
(Stepan)JERZY SKOLIMOWSKI
(Helen)SINÉAD CUSACK
(Azim)MINA E. MINA
(Ekrem)JOSEF ALTIN
(Soyka)ALEKSANDAR MIKIC
(Tatiana)SARAH-JEANNE LABROSSE
(Tatiana (voice))TATIANA MASLANY
Director:
DAVID CRONENBERG
