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山奥にある屋敷へ住み込みの給仕見習いとしてやって来た少年の体験記。
エルマンノ・オルミ監督がヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞した作品です。
田舎町の駅に降り立つ少年少女6人はホテル学校の優秀な生徒として、とある屋敷の給仕見習いにやって来ました。食材を運ぶ女性の車に同乗して山奥にある屋敷へと案内された6人が目にしたものは、「城」と言ってもいいぐらいの大豪邸でした。
早速、給仕として働き始める6人。その中の1人、リベンツィオは働きながら幼少の頃の記憶が甦り・・・。
ノンフィクションのようなフィクション。
この作品の冒頭にも「この映画はすべてがフィクションではない」と語られますが、まさにその言葉通りでした。
晩餐が始まるまでは本当にノンフィクションですね。普通に晩餐の準備を進めるコックや給仕たちの姿が描かれています。そうでないシーンといえば、ガラスが防弾であるかどうかを実際に銃を撃って確認するシーンくらいでしょうか。それだけ、今回の晩餐には名士や実力者が集まることを物語っています。
そして、晩餐が始まります。
この作品のタイトルは「偽りの晩餐」ですが、晩餐自体は嘘ではなく実際に行われます。
でも、あの大魚の料理は凄かった・・・あれは本物なのでしょうか(^_^;
ただ、晩餐に出席した客人たちの態度は、確実に「偽り」であるかのようでした。
彼らの目的はただ1つ。この晩餐の主催者であり、絶対的な権力があると思われる女主人に良く思われたいだけでした。「思われる」と書いたのは、そのことが語られることは一切なく、その場の雰囲気から読み取れるだけなのです。
この作品の特徴として、ストーリーはただ晩餐が行われるだけであって、そこに登場する人物の設定などは明確にされません。したがって、ストーリーの展開からその人物像を想像するしかないのです。
それにしても、あの女主人は怖かったかなぁ・・・妖怪?
客人たちにも、クセのある人物が。女主人の隣の席を用意されたのにも関わらず、入室早々、女主人から一番離れた席に移動する男。テーブルマナーも悪く、隣の席の女性を口説く始末。しかし、その傍若無人ぶりが功を奏し・・・。
この男も謎でしたねぇ。でも、この男だけは、偽っていなかったようでした。そこで妄想・・・。この男は女主人の息子なのでは?
さらに、娘を連れてきた男性客。何か窮地に立たされている様子・・・。連れの娘は透明感のある少女でしたね。女主人にも一目置かれます。給仕見習いの少年リベンツィオも一目惚れ。でも、身分の違いから話しかけることはもちろんできません。
リベンツィオは昔の記憶が何度も甦ります。学校のこと。家族のこと。リベンツィオは家族が恋しかったのでしょうか。でも、父と再会してもさして感情の昂ぶりはありませんでしたね。
エルマンノ・オルミ監督は、この作品で何を伝えたかったのでしょう。少年たちの思い出でもなく、晩餐での駆け引きでもなく・・・う~ん、叙情詩的なもの?
何も展開しないままラストを迎えてしまうのですが、なぜかラストシーンが印象に残ります。
何だろう・・・この不思議な感覚。まるで異世界に迷い込んだリベンツィオが実世界へ戻るファンタジー作品のようでした。
Title:
LUNGA VITA ALLA SIGNORA!
Country:
Italy (1987)
Cast:
(Libenzio)MARCO ESPOSITO
(Corinna)SIMONA BRANDALISE
(Anna)STAFANIA BUSARELLO
(Mao)SIMONE DALLA ROSA
(Ciccio)LORENZO PAOLINI
(PG)TARCISIO TOSI
(La 'Signorina')MARISA ABBATE
Director:
ERMANNO OLMI
Awards:
Venice Film Festival 1987
(FIPRESCI Prize)ERMANNO OLMI
(Silver Lion)ERMANNO OLMI
