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アルコール依存から更生した男の日常を描いたヒューマン・ドラマ。
英国労働者階級の人たちの実情を浮き彫りにしながら、1人の男の心の変化を丁寧に描いています。
アルコール依存症から立ち直るべく友人のシャンクスから「断酒会」なるセラピーを勧められ、5年後にようやく更生した男に残されたのは、仕事でもお金でもなく、「ジョー」という名前だけでした。
37歳になるジョー。仕事は未だ見つからないものの、サッカーチーム「ワンダラーズ」の監督としてシャンクスとともに、チームメイトから慕われていました。
しかし、チームの1人で甥のリアムの様子が最近おかしいことに気付きます。ドラッグ中毒から更生したリアムでしたが、妻サビーナの様子もおかしく、さらに、町を仕切るマフィアのマガウアンの手下からも脅されていることを知り・・・。
ジョーは面倒見の良いオジサンですねぇ。みんなから慕われるのも頷けます。
そんなジョーもアルコール依存症になっていたのですが、その原因もストーリーの中で語られています。ジョーの性格も1つの原因なのかもしれませんが、やはり、その根底には80年代における英国の地方経済の悪化に伴う失業率の増加があるのでしょうね。
しかし、ジョーは不屈の精神を見せ、立ち直り、保健センターで働く保健官の女性セーラと出会います。
セーラはリアムの家に家庭訪問に来ていました。リアムとサビーナの息子の様子を見ながらサビーナを気遣うセーラ。
この若いリアムとサビーナ夫婦がジョーとセーラを自分たちの問題に巻き込んでしまいます。
リアムとサビーナには、ムカつきましたねぇ。甘えるのもいい加減にしろ!って言いたくなってしまいます。特にサビーナは自分が悪いなんて少しも思っていないのでしょうね。サビーナのせいでリアムが悩み、そして、ジョーにまで迷惑をかけることになったのに・・・。
ジョーももっと早くシャンクスに相談すれば良かったのになぁ。何でも1人で解決しようとしてしまったのが間違いでしたね。でも、あの状況では、あの選択しかなかったのかなぁ。
リアムに見せる神妙な表情。
セーラに見せる幸せに満ちた表情。
シャンクスに見せる苦悩の表情。
そして、過去の荒れた時代での表情。
ジョー役のピーター・ミュランが、ジョーの喜怒哀楽を表現力豊かに演じています。
ケン・ローチ監督ならではの社会に鋭いメスを入れている作品でしたが、サッカーの試合のシーンは面白かったですね。
アウェーでの試合で西ドイツのユニフォームを着た「ワンダラーズ」でしたが、相手チームもなんと同じユニフォームだったため、裸で試合をすることになってしまいます。そこで、次の試合のときは・・・何を盗んだかと思えば・・・あれには笑ってしまいました。
ラスト。
ジョーとセーラの恋もテーマの1つでしたが、ジョーの行き急いでしまう一途な想いとは裏腹にゆっくりと愛を育みたいセーラ。2人は生活水準だけでなく、恋の温度差もあり過ぎたのかもしれませんね。
ジョーは、リアムやセーラから頼られることで、自分が更生したまっとうに生きている男だと自覚したかったのかぁ。その結果、リアムには頼られても、セーラにとっては無理をしている焦り過ぎていると見られてしまったのかもしれませんね。
でも、セーラはあのことをジョーに伝えたのでしょうか。
2人の関係を裂くことになってしまったリアムでしたが、最後のリアムの行動によって、再会を果たす2人。肩を並べて歩くジョーとセーラに決して幸せだけが待っているとは思えない寂しさが伝わってきました。
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Title:
MY NAME IS JOE
Country:
Spain/Italy/France/UK/Germany (1998)
Cast:
(Joe Kavanagh)PETER MULLAN
(Sarah Downie)LOUISE GOODALL
(Liam)DAVID McKAY
(Sabine)ANNE-MARIE KENNEDY
(McGowan)DAVID HAYMAN
(Shanks)GARY LEWIS
(Maggie)LORRAINE MCINTOSH
Director:
KEN LOACH
Awards:
Cannes Film Festival 1998
(Best Actor)PETER MULLAN
