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無差別殺人事件が発生するまでの犯人とその被害者の姿を描いた衝撃作。
ミヒャエル・ハネケ監督の三部作「感情の氷河化」の三作目です。
「フラグメント=断片」。
この作品はタイトル通り、断片でしか描かれていません。
私たちは、初めにことの結果をいきなり植え付けられます。
1993年12月23日。19歳の大学生マキシミリアン・Bがウィーン市内の銀行で3人を射殺、その直後に頭を撃ち抜いて自殺したと・・・。
そして、時をさかのぼり、1993年10月12日からのマキシミリアンと被害者たちの姿を断片的に追っていきます。
被害者となる3人には、それぞれ家族の問題がありました。
銀行へ紙幣を運ぶ仕事をしている男ハンズ。妻マリアと赤子の3人暮らし。しかし、赤子が熱を出し看病に追われるマリア。ハンズとマリアの関係も冷めているようでした。何とかしたいハンズなのですが・・・。
銀行員として働く娘と客として来る父のトメク親子。行列客に笑顔で対応する娘でしたが、客として来る父とは揉め事ばかり。父は1人暮し。娘は結婚して子供もいます。父は娘から煙たがられていると思い込んでいる節もあり・・・。
ブルンナー夫妻。彼らは子宝に恵まれず養子を迎えることを決めますが、うまく馴染めない・・・。そんなある日、テレビで観た1人の難民少年マリアンに惹き付けられるのですが・・・。
そのマリアンの姿も断片的に描かれていきます。
犯人であるマキシミリアンの動機はまったくの謎でしたが、パズルゲームのシーンを見る限りでは彼はキレやすい性格だったのでしょうか・・・。でも、その前から闇取引で銃を購入したりと、ただキレやすいという単純な理由ではないような気もします。
また、彼らの断片的なシーンの間にはテレビの報道番組が映し出されます。
伝えるのはどれも悲惨な事件や戦争・・・負の要素だらけです。マイケル・ジャクソンの幼児虐待事件もありましたね。
これらのニュースは、この作品と同じことが言えるのかもしれません。
私たちは、目撃していない事件をアナウンサーから言葉で伝えられ、レポーターの実況からは編集された一部分のみを映像として受け取るだけなのです。
そして、私たちはその情報だけで事件の真実を知ったと思い込んでしまいます。
情報の断片化が創り出す虚偽の世界。
それが映画そのものでもあることをミヒャエル・ハネケ監督は伝えているようです。
虚偽ではない真実の世界とは?
真実など探してもどこにもないのでしょうね。
ハンズとマリアの関係。
トメク親子の関係。
ブルンナー夫妻の子供への想い。
そして、マキシミリアンの犯行。
1つの作品に賛否両論があり、また捉え方、感じ方も人それぞれです。それは、映画が断片的であり、埋まることのないピースを観ている者たちが自分なりに考えているからなのでしょうね。
マイケル・ジャクソンの真実・・・それは、マイケル・ジャクソン本人だけが知っているのでしょう。
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Title:
71 FRAGMENTE EINER CHRONOLOGIE DES ZUFALLS
Country:
Austria/Germany (1994)
Cast:
(Marian Radu)GABRIEL COSMIN URDES
(Max)LUKAS MIKO
(Tomek)OTTO GRÜNMANDL
(Inge Brunner)ANNE BENNENT
(Paul Brunner)UDO SAMEL
(Hans)BRANKO SAMAROVSKI
(Maria)CLAUDIA MARTINI
(Bernie)GEORG FRIEDRICH
Director:
MICHAEL HANEKE
