特集レビュー 「感情の氷河化」 あとがき | ひでの徒然『映画』日記

ひでの徒然『映画』日記

映画レビューを徒然なるままに書き綴ります。

今回の特集レビューはいかがでしたでしょうか。


・・・重い。

・・・痛い。

・・・冷たい。


そんな言葉が出てきそうな作品たちでした。




そして、何より恐ろしいことは、

現在の日本でも、

この3部作の内容そのままに事件が起きているということです。


元厚生事務次官宅連続殺傷事件。

秋葉原無差別殺傷事件。


さらに、


東京江東区の女性不明事件。

渋谷妹殺害事件。


家族、近所という小さな社会においても

残忍極まりない事件が起きていることに驚きを隠せません。




ハネケ監督は十年前から

このような世界になっていくことを

察知していたのでしょうか。




そして、ハネケ監督作品からは何を感じ取れるのか。




ハネケ監督はインタビューにて、自分自身の心の最も深い部分に抱いている想念を




「コミュニケーションの不可能性」




という言葉で表現しています。




「人は会話する、だが伝わらない」

「近くなればなるほど話さない」




三部作のすべてに言えることは、「コミュニケーションの不可能性」でした。




「セブンス・コンチネント」では、両親と娘。

「ベニーズ・ビデオ」では、両親と息子。

「71フラグメンツ」では、被害者の家族たち。




どの関係も会話が成立していません・・・。




もし、加害者たちの身近に親身に相談できる人がいたら・・・。




自分の苦悩を人に語らないと、

心にその苦悩を貯め込んでしまい、

そして爆発させてしまうことも・・・。




不可能を可能にしなければなりません。




この三部作は「反面教師」のような作品なのかもしれませんね。











と、難しい話はこれくらいにして、

ハネケ監督作品になぜこれほどまで惹き付けられるのかを考えてみたら、

デヴィッド・リンチ監督の存在があるからなのかなぁという1つの結論が出ました。




2人の監督は偶然にも、共通して「考えるのではなく感じて欲しい」という表現をインタビューで語っています。




確かに、2人の作品は考えてしまうと、答えのない迷路に彷徨ってしまいます(T_T)




でも明らかに異なる点は、




リンチ監督作品の世界は「パラレルワールド」であるのに対して、

ハネケ監督作品の世界は「リアルワールド」であることではないでしょうか。




そのような点からすると、ハネケ監督作品の「ファニーゲーム」は他の作品とは一線を画するのかもしれませんね。




未見である


「カフカの「城」」

「コード:アンノウン」

「タイム・オブ・ザ・ウルフ」


を観て、また感じ方が変わるかもしれませんが・・・。




そして、初のアメリカ進出作品「ファニーゲーム U.S.A.」。




あのファニーとは思えないゲームが再び・・・(T_T)




主演は、襲われる妻役にナオミ・ワッツ、夫役にティム・ロスという豪華キャスティング。



ナオミ・ワッツ



ティム・ロス



ちなみに、「ファニーゲーム」での夫役は「善き人のためのソナタ」のウルリッヒ・ミューエだったんですよねぇ。彼は「ベニーズ・ビデオ」でも父親役として出演しています。


また、「ベニーズ・ビデオ」でベニー役を演じたアルノ・フリッシュも「ファニーゲーム」でウルリッヒ・ミューエと再び共演しています。しかし、あの青年と同一人物だったとは・・・少年の成長は早いものです。


「ファニーゲーム U.S.A.」では、ナオミ・ワッツとティム・ロスを襲う白尽くめの青年役に若手俳優のマイケル・ピットとブラディ・コーベット。



マイケル・ピットとブラディ・コーベット



はたして、「ファニーゲーム」のアルノ・フリッシュとフランク・ギーリングを超えることができるのか・・・。


来月から劇場公開だそうです。お楽しみに。




・・・おっと、お楽しみになんて言える作品でもありませんね。




ハネケ監督作品に引き込まれ過ぎたみたいなので、今回はこのへんで・・・(^_^;