監督:フランソワ・オゾン
キャスト:シャーロット・ランプリング、ブリュノ・クレメール、ジャック・ノロ、アレクサンドラ・スチュワルト
製作:2001年、フランス
ジャンとマリーは結婚して25年。子供には恵まれなかったが幸せな生活を過ごしていた。今年の夏もフランス南西部ランド地方に所有する別荘へ出向きバカンスを満喫する2人。
2日目。近くにある人気のない海岸へ行く2人だったが、マリーが浜辺で寝ている間にジャンが泳ぎに行ったまま失踪してしまう。
レスキュー隊や警察の捜索も虚しくジャンの姿は見つからなかった・・・。
パリへ戻ったマリーは、ジャンのことが気がかりながらも普段の生活を余儀なくされる。そして、マリーにはジャンの「まぼろし」を見るようになっていた・・・。
Comment:
フランソワ・オゾン監督の長編初期作品。
心理状態が非常に難しいマリー役をシャーロット・ランプリングが見事に演じています。
マリーはジャンの失踪を認めたくない気持ちからジャンの「まぼろし」を見るようになり、普段と変わりなくジャンの分まで食事を作り、話しかけます。しかし、タイトルが「まぼろし」でなければ、本当にそこにいるような撮り方をしているので、初めて失踪後にジャンが登場したときは、「この映画はサスペンス?何か2人が仕掛けたトリックなのか?」と勘ぐってしまいました。
マリーは友人のアマンダから励まされ、さらに、マリーに好意を持つヴァンサンとの関係も深まることで、ジャンの「まぼろし」にも変化が起き始めます。その変化はマリーの心をありのまま映し出しているかのようでした。
ヴァンサンとのキスに嫉妬するジャンのときは、マリーの心はジャンの想いで満たされていましたが、ヴァンサンとの付き合いが深まるとジャンだけでなくヴァンサンも「まぼろし」として現れます。そして、ヴァンサンを家に呼び一夜を共にすると、ジャンはマリーに微笑みかけて消えてしまいます。
このジャンの姿を「ゴースト」ではなく、マリーが作り出した「まぼろし」として表現するあたりがフランソワ・オゾン監督らしいですね。
しかし、警察からの1本の電話でマリーは現実に引き戻されてしまいます。
そして・・・。
ランド地方の浜辺で初めてみせたマリーの涙。そして、再び現れたジャンの「まぼろし」に向かって走り出すマリー。しかし、その「まぼろし」は、今までのジャンの死の否定によって生まれた「まぼろし」ではなく、ジャンの死を受け入れ、愛する思い出となった「まぼろし」だったのではないでしょうか。
「まぼろし」という非現実的な現象を題材にしていますが、非常に現実的な作品のように感じました。