怖かったことも書いていこう。
その時は怖さを感じなかったが、恐ろしく怖いことをしていたこと、はたから見たら命知らずのことをしたこともあるが、これはほとんど同時にバカな私でさえ怖さが分かったものだけである。
・一部の方はご存知のように、思い出すたび恐ろしさが蘇ってきて、なかばトラウマになっているものに、キングコブラとの面接がある。
クレオパトラの葡萄を噛んだうらやましい奴のように可愛いものではない。
まるで丸太。
大きいものは、6メートルを超えるらしいが、私が対面したのはそこまでは大きくはない。
だいたい2メートルを少し超えるくらいの奴だ。
この長さなら青大将にも稀にいるが、太さがまるで違う。
青大将が小枝くらいなら、キングコブラはまさに丸太。
鱗1枚が、赤ちゃんの拳より大きく、黒光りしている。
「好きな奴を選べ」と言った料理人は無造作に檻を開けたのだ。
檻には数十匹がたむろしていたが、うち3匹が檻から抜け出し足元にやって来る。
目はまばたきもせず、半分寝ているような目付きで私を見上げた。
よく映画や雑誌で見るような鎌首を持ち上げた姿ではなく、丸太に冷静な目をつけたような格好だった。
キングコブラ語はできないから、心の中で俺はお前の敵ではないと思ったが、あれは嘘だった。
しばらく後には、胃のなかに入れてしまったのだから。
見栄を張れるだけの余裕は残っており、体は固まっていたが、下手な作り笑いをして顎を動かし餌となるべき奴を指定した。
正直、どれでも良かった。
私には、キングコブラの容姿を見分ける能力がない。
とにかく、役目を終えたかった。