鬼首に、当時広さ日本一とされていた広大な付属施設がある。
東京ドームグラウンドの1800倍。
広すぎて分かり辛いかな。
千代田区の2倍である。
ほとんどが山林だが、わずかに放牧地や耕地がある。
ここで私たちは、驚くべきものをいただいた。
牛乳である。
田舎でも乳牛を育てている家があり、飼っていて味に慣れていたヤギの乳だけでなく、ごく稀ではあるがお遣いに行って2、3リットルを買ったりはしていた。
が、そこで出された牛乳はそこ以外ではいまだに味わえない、濃厚な味と甘味があった。
それでいて、水のように喉をなめらかに通った。
子どもの時は象牙鍵盤ピアノを弾いていたという、あるいはニンジンが土に生えているのを初めて見たとはしゃいでいたマドンナもひどく感動していた。
とにかく旨さの塊でありながら、しつこくはなかった。
牛乳は好きとは言えない私だが、あれはもう一度飲んでみたい。
ジンギスカンの後、数キロ離れた宿泊施設まで歩く。
私有地のようなものだから、無免許女子をからかいながら、トラックなどで移動することもできたが、私は歩いた。
すぐ後ろにはちゃんがいた。
この時私は、家訓だか自訓だかを守って、国禁をおかさないよう苦悩した。
が、なんと新潟のアンちゃんが、すぐ脇に付いてきた。
あーあ。
あれは食べなくて良かったのやら。
はたまた、北キツネ同様、バカな家訓、いや、自訓だったのやら。
この年になっても分からない。
とにかく、新潟のアンちゃんは、私が国禁を犯して食べてはならないものを食べることをさせなかった。