私がパトカーに乗った2回目は、いまだに不可解な事件に関係する。
半世紀近く私の脳裏の一角を占領しているヴェガと初めて目が会い、一発KOされたにもかかわらず、以後身近になり虫歯の位置を目視確認し、学校のトイレ掃除を一緒にする間柄になったにも拘わらず、ダイヤモンドが永遠な存在であり続けていただけと同様、不可解なことがあった。
いや、ヴェガが身近が故にアンタッチャブルであったことは、私なりに今でも納得できる理由がある。
が、2回目のパトカー護送は、いまだに解らない何かがある。
丁度その頃、今は東大か京大あたりで教鞭を取っていらっしゃる方の勧誘で、白神の親分や学生にしてヤクザ屋さんと殴りあいをしパンダの顔になった友人と共に、殴られ方や蹴られ方の実地学習をしていた。
だから、子平町から篠田なんとかという芸能人の家の方に行くT字路で、突然襲われた時も、ほうこれはプロの殴り方だななどと、かなり余裕を持って殴られていた。
が、周りの住民の方たちにはそうは映らなかったらしい。
殺されそうになっている人がいると連絡した方がいたようで、しばらく殴られていたらパトカーが何台か来て、そいつと私と一緒に殴られていた友人は、別々の車で北署に連行された。
北署の話では、少年院を昨日出てきたばかりの奴で、誰かと勘違いされたのだろう、ということだった。
が、これは単なる勘違いではなかったことや、其奴の陰に彼の行動を静観していた、かなりの年をしたプロが見えた。
もちろんこれは警察には言っていないが、私らはパトカーで下宿まで送り届けられた。
その上、世間話のついでに、北署にリクルートされた。
話が分かる警官がいるものだなあ、と思った。
あの事件は、いかにも危ない輩を無視して、肩で風を切っているような歩きをしていた私の思い上がりも原因のひとつだが、その少年院帰りと年かさの男は、確かに私らを最初から狙っていた。
結局、あれは何だったのだろう。
いまだに解らない。