【参考人】住所不定 島野爺太郎 19歳 学生 前科なし | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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パトカーには2度乗ったことがある。

最初の経験は、身元引き受け人兼参考人としてだ。

その時私は、引っ越し手続きの行き違いから、1ヶ月ほど住む場所がなくなり、友人のアパートに潜り込んでいた。

事件は、その時起こった。
アパートでみんなで飲んだ朝のことだった。

1人はバイクで家に向かっていた。
そこでパトカーを見た友人は、飲酒運転がバレるのを恐れて、逃げたらしい。
カーチェイスの後、隠れていたが警官に見つかりお縄となった。

問題はまだ続く。
飲酒の罪を恐れてか、彼は年を1つごまかし、二十歳と言ったらしい。

かなりのカーチェイスをしたらしく、翌日の新聞にも名前つきで記事が出た。

その身元引き受け人として、アパートの主と居候の私が指名されたらしい。

その時、警官は年齢も詐称したため、名前を公表してしまった誤りに気付いたが、時すでに遅し。

朝刊が各家庭に配られた後だった。




警察では、思ったほどは絞られなかったが、身元引き受け人として私のサインと、なぜか5本指すべての指紋を取られた。


参考人
島野爺太郎 19歳
住所不定 学生
※前科なし


なる調書もできた。



居候させてもらっていたアパートの主は、密かにヴェガを片思いしていた珍しいやつで、ある意味私と同類だった。
が、彼は結局一言もヴェガとは話しさえできる機会がなかったかも知れない。 後日、写真のモデルになってもらったりした私を羨ましがっていた。




カーチェイスしたやつは、かなりの家の息子だったらしく、結婚式には大勲位からの祝辞も読まれたらしい。


まあ、昔の田舎では比較的よくあったことではあるが。

日焼けばあちゃんの葬儀にも、国務大臣や県知事からの電報。

そんなことが、たまに見られた時代のことだ。