【昭和日記】秋模様きのふは、秋の入りを思はせる気配だった。ここ東葛飾風魔村では、久々に姿を見せた青空に白雲がいくつか浮かび、それぞれがみな歩みを早めてゐた。 庭を歩く蟻に、「暑ひなか精が出ますなあ」と世辞を言ふ程の日の痛さも無ひ。椚の林ではかなかなかなと暑い夏を懐かしむが如く、哀悲しい声が鳴り響く。 秋の茸さへ顔を出してゐた。されど、暦はまだ夏休みが始まったばかりなり 野道には、日暮れになると宵待草の淡い黄色い花が顔を覗かせてゐる。 よひまちや いちやばかりの けさうかな