【テレパシー小説3】言語不明・お山の大将 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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XXXXXXXXXXXかーーー!


大声に、まわりの人間がかたまった。

何と言ったかは定かではない。

が、へりから降りてバスに入ったとたん、馬韓の恫喝するような声が響いた。


事前に現地に飛んでいた平野も、バス内で何か異常なことがあったのを察知した。

急いで、バスに乗り込む。




県職員と、参事官が硬直した体で泣きそうな顔をしている。

馬韓が何やら言ったようだ。


旧知の平野が入って来たのに気付いたかどうかは不明だが、馬韓はまた大声を出した。


今度ははっきりと言葉がわかった。


「なんで俺が、ここに来たかわかっているのか!」

馬韓の目が固まっている。

気分の悪い時の特徴だ。


なんで馬韓がここへ来たのか?

それは、現場の善田に限らず、平野も聞きたいぐらいだった。


馬韓は、とんでもない勘違いをしている。


現場の人間は、それこそ必死だ。

高放射能の値を示す中を、死を覚悟して人力でケーブル運搬をしていた。

もちろん、現場も県職員も平野も、当然一睡もしていない。


一国のアタマが現場へ来ると言うことで、県警にも急遽出動させたほか、現場の人々のせっかくの仮眠時間さえ奪っておきながら、それは無いだろうと思った。

せめていたわりの言葉位はかけろよ!

平野はそう思った。

馬韓との付き合いが長い平野だが、これはひどすぎる。

後日行われた原発事故調査委員会の尋問に、平野はそう答えている。






平野は馬韓の性格を知っているからまだしも、県職員などはあまりの剣幕に体が震えている。



馬韓はこうやって生きてきた。


学生運動の時もそうだった。


冷静に考えるとめちゃくちゃだが、押しの強さは抜きんでていた。


元公安委員会の重鎮は、そう証言している。





『四列目の男』


公安ではそう呼ばれていた男が、いまやこの国のトップになっている。


四列目で角棒に隠れて石投げしていたあいつが・・・・・・・・。


元公安の佐々岡の頭に、ふと浅間山や京浜東北線が浮かんできた。



同時に、北に飛んだあの憎っくき連中のことも。



日本の法を破壊し、日本の顔に大きな泥を塗った。

世界中から、笑いものにされた。




佐々岡は、今でもそう思っている。


しかしながら、その北へ飛んだ強盗連中を、後ろで支えている連中がいる。


その連中と浅からぬ間と、昔から目をつけていたのが馬韓だった。


ほぼ証拠がそろい、国会でも質問攻めにあい、馬韓の引責辞任は時間の問題だった。



が、あの地震・津波が起こった。


当時野党だった寿民党も、追及の手を緩めざるを得なくなった。



国民は、テロ組織との関係も、億近い不透明な金の流れも忘れてしまった。

いや、マスコミはその黒い霧報道を規制した。



潜水艦の極秘資料が消えたことも、中東の協力調査員名簿がテロ組織に渡った件も、容疑者がほぼ特定されたものの、逮捕には至っていない。

その前にあれが起こった。




ほとんどの国なら銃殺もののこうした行為さえ、あの地震・津波、さらに原発事故報道の中で消えてしまったのである。











報道は消えても、罪が消えることは無いはずなのだが・・・・・・。