私は反対です。
保田野がハッキリ言った。
馬韓は、ぐじゃぐじゃ論を言われることを最も嫌う。
頭が、理論についていけないからだ。
保田野は、ここ10年の付き合いで、そんな馬韓の性分を知っていたのだ。
だから、結論を簡潔に述べた。
が、たぶん考えは変わらないだろうとも思っていた。
馬韓は直情型人間だ。
また、重視項目・優先項目の判断基準も保田野とは全く違う。
こんな時に一国の指揮官が現場に行くことは、邪魔なだけである。
現場では、1秒をも争う作業をしている。
しかし、そこに一国のアタマが行くとなったら、形の上でもそれなりの体制を作らなければならない。
だいたい、指揮官が行った所で、現場の状況が好転するわけではない。
だれが観たってパフォーマンスだ。
保田野はそう考えた一方で、こうも思った。
どうせ国民はあのテロ国家支援疑惑依頼、馬韓のことをほとんど信用していない。
持ち上げているのは、政治部に学生運動仲間がいる馬酔木新聞くらいだ。
馬韓には、現場に行ってもらおう。
俺が政治を見る。
政治手法としてはおかしいが、その方が国が動く。
保田野は、意気揚々としてヘリに向かった馬韓を見てそう思った。
自分でどうなるのが分かっていたら、ご自分の好きなとように・・・・・・。
保田野は、笑顔がもれている馬韓の背中に、そう言った。
大根事件に続いて、歴史に残ることを決定づけた、4時間前緊急決定した現場視察
現場では、そうでなくても時間が欲しいのに、さらに悪化させた。
人命より、パフォーマンスが重要なのである。