「分かったわ。素晴らしい性能だわ。あなたのところと契約します」
「ありがとうございます」
「そうそう。おなたの息子さんは、もうずいぶん大きくなったのでしょう」
「ええ。変に口応えするバカ息子ですが」
「……!」
「……。あのう、何か?」
「この契約は、破棄させていただきますわ」
「えっ?でも、今しがた契約されるとおっしゃっていただきましたが」
「自分の子どもさえコントロールできないばかりか、バカ呼ばわりする。自分の子どもさえ自慢できない人の作った製品が、よいはずがありません。それから、先ほどあなたは、私へのプレゼントとしてチョコレートを渡す時に、『つまらない物ですが』と言ったわよね。さっきは我慢してたけど、はっきり言うわよ。相手につまらない物を渡すような方は、最低です。でも見逃してやったわ。でもね、もうダメ。相手につまらない物を平気で渡し、自分の子どもさえコントロールできず、自慢さえできない方は、完全にアウトです。あなたたちの国の言葉で言うなら、ブッダの顔も三度まで。分かった?」
トホホ。
日本の控え目、謙遜という感覚は全く通じない。
少なくともその相手にとり、私は無責任で無礼な相手であった。
たぶん私は、常識知らずの人間に相違ない。
謙遜を美徳ととらえられる民族は、非常に少ないようだ。