
日本有数の量販店が、チンナ国に初めて出店した。
その開店記念に、先着1000名にオモチャをプレゼントする企画があった。
オモチャは、飛行機、パトカー、それに消防車である。
日本では、ロジスティックスレジェンドとも呼ばれていた、企画部次長が言う。
まずは飛行機だな。
これを600。
パトカーが300。
消防車は、100だけでいい。
これを現地マネージャーにも伝える。
と、思いもよらぬ申し出があった。
飛行機とパトカーは50ずつで十分だという。
本音は、すべて消防車にして欲しいと言う。
間に挟まれた私は、レジェンドのへそが曲がるのを恐れつつも、飛行機400、パトカーと消防車はそれぞれ300に変更できまいか探りを入れた。
これはブツブツ言われながらも、なんとか聞き入れられた。
さて、開店当日。
レジェンドより現地マネージャーの勘のが正しかった。
レジェンドも参加した開店日。
真っ先に無くなったのが消防車だった。
飛行機やパトカーしかないのを見て、ガッカリしている大人たちが多い。
多分、子どもに頼まれたものを手に入れられなかったからであろう。
閉店後のセレモニーで、私は現地マネージャーに、なぜ消防車が人気なのかを聞いた。
旦那。
考えてもみなせえ。
こちとらチンナ国じゃあ、飛行機は爆弾落とす怖いやつ。
パトカーは、わしらをいじめにやって来る車。
好きなやつなんざあいませんよ。
でもね。消防車。
ありゃあ、いい。
あいつがやって来る時にゃあ、いろんなもん運び出せまさあ。
うまくすると、水浸しになった金入れ瓶も見つかりやす。
まあ、そんときはみんな楽しく宝物探しでやすなあ。はっはっはっ。
だから、大人は、みーんな消防車は大好きでさあ。
はっ?
……。
